2015 Fiscal Year Research-status Report
抗てんかん作用を発揮するカンナビノイド依存性シナプス可塑性の解明
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15K18331
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋本谷 祐輝 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50401906)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 内因性カンナビノイド / シナプス可塑性 / 海馬 / CB1受容体 / てんかん / 苔状細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳内のマリファナ類似物質である内因性カンナビノイドは、カンナビノイド受容体1型(CB1)の活性化を介してシナプス伝達を短期的あるいは長期的に抑制する。近年、海馬歯状回の歯状回門に位置するグルタミン酸作動性の苔状細胞と顆粒細胞によって形成される興奮性シナプスにおけるCB1受容体の活性化がてんかん発作を抑えることが明らかになってきた。しかし、その機構の詳細は不明である。本研究では、まず歯状回の苔状細胞-顆粒細胞シナプスにおける長期シナプス可塑性に対するCB1受容体の寄与を電気生理学的に解析する。そのうえで、CB1受容体依存性のシナプス可塑性が、シナプスレベルでてんかんを抑えるメカニズムを明らかにすることを目指した。
実験にはマウスの海馬急性スライス標本を用い、主に電気生理学的解析を行った。海馬歯状回の顆粒細胞から全細胞パッチクランプ法で記録を行い、CB1受容体を発現する苔状細胞の軸索を刺激するために刺激電極を分子層の最内側部に設置し、苔状細胞-顆粒細胞シナプス応答を誘発した。まずこのシナプスにおいてCB1受容体依存性の長期シナプス可塑性が誘導されるかどうか調べた。さまざまな周波数や刺激回数で誘導条件を検討したが、長期シナプス可塑性は観察されなかった。次に、なんらかのプライミング刺激を受ける事によってシナプス可塑性が誘導される可能性を検討した。その結果、海馬スライスをグループI代謝型グルタミン酸受容体のアゴニストであるDHPGで10分間処理した後に低頻度で苔状細胞の軸索を刺激すると長時間に渡ってシナプス応答が減弱する長期抑圧(LTD)が観察された。このLTDを解析したところシナプス前性の変化であること、さらにCB1受容体依存性であることを明らかにした。次年度は、DHPGによるプライミング機構を詳しく調べるとともに、てんかんを起こした場合LTDがどのように変化するのか検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は苔状細胞-顆粒細胞シナプスにおいてCB1受容体が関わるメタ可塑性が引き起こされることを明らかにできた。プライミング刺激の探索は本研究課題の出発点であることから、計画どおりに最適刺激条件を見いだせたことは順調な進展であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
DHPGによるプライミング効果が明らかになったことから、その詳しい分子機構を調べる。特にCB1受容体の感受性や発現量の変化、あるいは内因性カンナビノイド産生量の変化に注目して解析を進める。またマウスにてんかんを起こすことによってLTDがどのような変化を受けるのか検討し、てんかんにおける苔状細胞-顆粒細胞シナプスの寄与を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度に予定していたシナプス可塑性のメカニズム探索で行う薬理学実験ではさまざまな試薬が必要となることから試薬の購入を考えていた。 しかし、実験の進展状況などからターゲットを絞りきれていない点もあり一部、試薬の購入を控えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は前年度分の残額を試薬の購入に充てる予定である。
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[Journal Article] Emerging roles of ARHGAP33 in intracellular trafficking of TrkB and pathophysiology of neuropsychiatric disorders.2016
Author(s)
Nakazawa T, Hashimoto R, Sakoori K, Sugaya Y, Tanimura A, Hashimotodani Y, Ohi K, Yamamori H, Yasuda Y, Umeda-Yano S, Kiyama Y, Konno K, Inoue T, Yokoyama K, Inoue T, Numata S, Ohnuma T, Iwata N, Ozaki N, Hashimoto H, Watanabe M, Manabe T, Yamamoto T, Takeda M, Kano M.
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Journal Title
Nature communications
Volume: 7
Pages: ー
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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