2016 Fiscal Year Research-status Report
光遺伝学的手法によるオリゴデンドロサイト分化の光制御
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15K18337
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小野 健治 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教 (80329698)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 細胞分化 / オリゴデンドロサイト / 脱髄疾患 / オプトジェネティクス / グリア前駆細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、光遺伝学的手法によるグリア前駆細胞からオリゴデンドロサイトへの細胞分化制御メカニズムの解明と将来的な再生医療応用へと展開するための基盤を確立することが目的である。平成28年度は、NG2を発現したグリア前駆細胞にChR2-EYFPを発現させたマウス(NG2-ChR2マウス)を用いて、リゾホスファチジルコリン(LPC)を脳や脊髄に投与した脱髄モデルを作製し、脳脊髄内でのChR2発現グリア前駆細胞における光刺激による細胞マーカー発現変化や運動機能改善に関して検討を行った。脳内にLPCを投与し脳梁部位へ脱髄を生じさせると、脱髄傷害部位へChR2-EYFPを発現した細胞の顕著な集積が見られた。これらの細胞の大部分はNG2を発現しており、一部にオリゴデンドロサイトのマーカーであるGalCを発現していたが、アストロサイトのマーカーであるGFAPやミクログリアのマーカーであるIba1を発現した細胞は確認できなかった。青色光刺激を行った脳では、非照射群と比べてChR2-EYFP発現細胞の数が増大し、特にGalCを共発現した細胞数が増大した。脊髄にLPCを投与した脱髄モデルマウスにおいて同様に検討を行うと、青色光照射群では、非照射群に比べてChR2-EYFP発現細胞の増大が見られ、NG2を共発現する細胞やGalCを共発現する細胞の増大が確認された。また、これらの細胞は光照射群では分岐した形態をとるものが多くみられた。さらに脊髄に脱髄を起こしたマウスについて青色光非照射群と照射群においてロータロッドによる運動機能評価を行うと、青色光照射群において運動機能の回復が確認された。これらのことからChR2を発現したグリア前駆細胞は、青色光で刺激することによりオリゴデンドロサイトへ分化し脱髄病変の緩解に寄与している可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の計画は、脱髄モデルマウスの脳脊髄内において光刺激を受けたChR2発現グリア前駆細胞がオリゴデンドロサイトへ分化するのか、運動機能が回復するのかについて検討することであった。脳や脊髄に脱髄を生じさせたマウスの解析から、光刺激によりオリゴデンドロサイトマーカーを発現した細胞が増加することや分岐状の形態を示す細胞が増加すること、ロータロッドテストによる運動機能改善がみられることなどを明らかにしており、おおむね予定通り進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は引き続きNG2-ChR2マウスを用いた脱髄モデルでの解析を進めていく。特に今見られている現象がどういった機序で生じているのかについて検討していく。平成27年度に主に実施した細胞実験等の結果を踏まえて同様の機序が生体内でも生じているのか、神経細胞やミクログリア、アストロサイトなどの他のグリア細胞とのどのような細胞間相互作用を及ぼしているのか、生化学的手法だけでなくレーザーマイクロダイセクション等も用いて多面的に解析を進める。
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Research Products
(3 results)