2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K18340
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
濱口 航介 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50415270)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | songbird / temperature manipulation / brainstem feedback / sequential activity / intracellular recording |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、脳が順序とタイミング情報を正確に作り出す神経基盤を明らかにすることである.音声や歌は,運動要素を順序正しく,正確なタイミングで組み合わせて作られる運動である.本研究では順序規則を持つ歌を覚え,正確に歌う能力を持つ鳴禽類(小鳥)を用い,タイミング情報の生成機構を明らかにする. 初年度は、自由行動下での細胞内膜電位記録とその実験結果の解析,さらに改造型微小ペルティエ素子による局所温度操作を行った.小鳥のHVC神経核(前運動野に相当)には歌の順序とタイミングに依存して,一度だけ発火する神経細胞があり,特定の歌のタイミングを表現すると考えられている.我々は細胞内膜電位記録用のマイクロドライブを作成し,自由に歌を歌うキンカチョウのHVCから細胞内記録を行い,タイミングを生成する神経活動の背後にあるシナプス活動を計測した.この実験から,異なるタイミングを表現する神経細胞の背後には,非常に数多くの同期したシナプス入力パターンが存在する事が明らかになった.この結果はHVCが局所にタイミング情報を生成するモデルとは一致しない. 一方,これまでの実験から,HVCを冷却すると歌のテンポが遅くなることが知られている.しかし,歌の速度の温度依存性と,神経細胞の電気的特性の温度依存性は,定量的に一致しない.我々は,歌のタイミングはHVCを含む脳全体にまたがる神経回路網によって作られるなら,この矛盾が解決できると考えた.これを検証すべくペルティエ素子からなる脳の局所温度操作デバイスを作成した.その結果,脳幹部の情報をHVCに中継する視床の神経核を冷やすことでも,歌が遅くなることを見出した. これらの結果は,歌のタイミング情報は皮質でだけ作られるのではなく,呼吸の情報を含んだ脳幹部からのフィードバックを用いて生成されることを意味する.これらの研究結果は、現在論文投稿中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ペルティエ素子による脳の温度操作は,非特異的な温度変化が問題であった.本年は改良したペルティエ素子を用い,より局所的な温度操作を行うことが可能になった.このため実験が進展し,現在は論文を投稿中であるため,おおむね順調に進展していると評価した.
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究計画の後半として、温度感受性および観測されたシナプス入力の統計を説明できるような神経回路モデルを作成する予定である.また光遺伝学を用いた歌タイミングの操作を行う.
|
Causes of Carryover |
平成27年度は実験が比較的順調に進んだため,結果として使用するマイクロドライブ,電極材料,各種試薬などの消耗品類の消費が少なかった.一方で,平成28年度は次の段階に進んだ実験を開始するため,より研究費が必要となる.研究費を有効に活用するため,次年度配分額と合わせて動物実験にかかる電子機器,諸消耗品の購入などに使用する予定である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究計画に沿い,また実験の進展にあわせて,光遺伝学に必要な各種光ファイバやレーザー光源の充当,各種試薬等消耗品の購入にあてる予定である.
|
Research Products
(3 results)