2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K18356
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小林 祐樹 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (90738270)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 衝動性制御 / 内側手綱核 / 電気生理学 / 光遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
衝動性制御の異常は多くの精神疾患で共通してみられる中間表現型であり、暴力や問題行動の一因になっている。さらに精神疾患の主な死因は自殺であり、これも衝動性制御の異常がが原因であると考えられる。これらを解決するために衝動性の制御の神経生物学的機構の理解は非常に重要であると考える。申請者らの研究により内側手綱核を遺伝学的に欠失させたマウスは様々な認知機能の異常を示すとも著しい衝動性の制御の異常が観察された。これらのことより申請者らは腹側内側手綱核に着目し、その衝動性制御における役割を解明しようと研究を行っている。 腹側内側手綱核にウィルスを注入して化学的遺伝学手法(DREADD)あるいは光遺伝学手法を用いて急性に腹側内側手綱核の神経活動を抑制し、衝動性制御をはじめとする様々な行動にどのような変化があるのかを観察した。今後は内側手綱核にウィルスを注入し、内側手綱核の投射先である、脚間核及び縫線核の神経終末を抑制したとき認知機能あるいは衝動性の制御にどのような影響があるのかを検証する予定である。 急性スライスにおけるパッチクランプ法による腹側内側手綱核の電気生理学的解析の確立。これらにより衝動性の高い動物で内側手綱核の電気生理学的特性がどのように変化しているのか調べることができるようになった。慢性的なストレス負荷動物モデルはうつ病様の行動を示すことが知られている。このストレス負荷動物の外側手綱核の神経活動が亢進していることが報告されている。しかしながらストレス負荷動物における内側手綱核の電気生理学的特性の変化などは知られていない。今後は母子分離ストレス負荷マウスにおいての衝動性制御の異常を行動学的に解析を行い、それらのマウスにおいてどのような電気生理学的特性の変化があるのかを検証していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
内側手綱核を急性に操作するためにAAVウィルスを注入する。その注入の条件検討に時間を要したが、最終的に最適な実験条件を得ることができた。現在は化学的遺伝学的手法による内側手綱核の神経活動の抑制したマウスで様々なの行動実験を行っている。今後は光遺伝学的手法を用いて経路選択的な神経回路の抑制を行い、その効果を衝動性制御をはじめとする認知機能に関して行動学的解析を行う。 一方で、化学的遺伝学や光遺伝学の効果を検証するために急性スライスによるパッチクランプ法による電気生理学的測定を試みたところ、測定手法を確立することができた。このことにより化学的遺伝学や光遺伝学の効果を検証する。さらにまた遺伝学的(遺伝子ノックアウトマウスなど)、ストレス負荷モデル、薬剤投与モデルによって衝動性制御の異常を示す動物で内側手綱核の電気生理学的特性がどのよう変化するのか検証を行えるようになった。 ストレス負荷モデル動物として衝動性制御の異常や情動行動の異常が報告されている母子分離ストレス負荷マウスを作製し、情動行動や活動量にコントロール群との間に有意な差が観察され、ひとつのストレス負荷マウスの作製を確立することができた。衝動性の制御に関する行動解析終了後に急性スライスによる電気生理学的解析の実施を予定している。この実験により内側手綱核の神経活動と衝動性制御の関係が明らかになると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
内側手綱核にウィルスを注入し、投射先である脚間核あるいは縫線核の神経終末の活動を光遺伝学的抑制した場合、行動あるいは衝動性制御にどのような影響があるのか、高架式十字迷路、行動量測定、5選択反応時間試験、T字迷路を用いた意思決定課題などを行う。 衝動性制御の異常や不安行動の異常が報告されている母子分離ストレスを与えたマウスを作製し、衝動性を測定するために行動量測定、5選択反応時間試験、T字迷路を用いた意思決定課題を行いストレス負荷群にどのような衝動性制御の異常が観察されるかを確認する。さらにこれらのそれぞれのマウスに関して腹側内側手綱核の急性スライスにおける電気生理学的実験を行い、どのような電気生理学特性の差異がコントロール群とストレス負荷群の間にあるか検証を行う。その電気生理学特性と各種の行動の相関も検証する。また内側手綱核は不安などの情動行動の制御も行っていると考えられている。情動行動に関しても内側手綱核の神経活動との相関があるのかを検証を行いたいと考えている。さらに母子分離ストレスには性差があると報告されている。このストレス負荷群において電気生理学特性についても性差があるか検証を行う。ストレス負荷群において例えば神経活動の亢進または減弱が見られて場合、内側手綱核を光遺伝学的手法により神経活動を調整しコントロールレベルに戻してあげることによって衝動性制御の異常が回復するかを回復実験を行う。さらに分子生物学的機構の知見を得るため腹側手綱核特異的にCreの組換えがあるChat-CreマウスとCre依存的にYFPをマウスを掛け合わせ、その仔に母子分離ストレスを与え、そのごフローサイトメトリーで内側手綱核を回収し、ストレス負荷群とコントロール群で網羅的遺伝子発現解析行うことも可能である。
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