2015 Fiscal Year Research-status Report
嗅内皮質を介した海馬への感覚情報伝達経路 - 最新技術から回路構造を探る
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15K18358
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大原 慎也 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (10570038)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 嗅内皮質 / カルビンジン陽性ニューロン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、嗅内皮質表層に分布するカルビンジン陽性(CB+)ニューロンの入出力関係を調べ、嗅周囲皮質(PER)/嗅後部皮質(POR)から海馬への情報伝達経路を明らかにすることである。近年、このCB+ニューロンの分布が空間情報処理を担う内側嗅内皮質と非空間的なオブジェクト情報を担う外側嗅内皮質で異なることが報告された。このことから、CB+ニューロンの結合関係がこの2領域で異なる可能性が考えられたが、CB+ニューロンの結合関係はこれまで見落とされており明らかにされていない。そこで当該年度は、CB+ニューロンの出力路が外側嗅内皮質と内側嗅内皮質においてどのように違うのか調べた。その結果、CB+ニューロンの投射先は外側嗅内皮質と内側嗅内皮質で大きく異なることが明らかになった。内側嗅内皮質のCB+ニューロンは海馬に投射を送るのに対し、外側嗅内皮質のCB+ニューロンは海馬には投射せず、内側前頭前野に投射していた。また、外側嗅内皮質のCB+ニューロンは内側嗅内皮質にも投射を送り、嗅内皮質内で局所回路を形成していた。これは、嗅内皮質表層ニューロンが海馬への入力路、深層ニューロンが海馬の出力路を担うとしてきたこれまでの解剖学的知見と大きく異なる。このCB+ニューロンが形成する神経回路の構造と機能を明らかにすることで、外側嗅内皮質と内側嗅内皮質の機能差を生む神経基盤を明らかにできるのではないかと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
嗅内皮質のCB+ニューロンの投射経路については計画以上に研究が進んだ。 一方、PER/PORから嗅内皮質CB+ニューロンへの入力路の解析は遅れている。その原因は、入力路同定に用いる予定であった狂犬病ウイルスベクターがPER/PORのニューロンには感染しないことが判明したことによる。現在、狂犬病ウイルスベクターを用いたトレーシング法に代わる手法として、mGRASPを用いたシナプス接続可視化法の開発に取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在取り組んでいるmGRASPを用いたシナプス接続可視化法を用いて、PER/PORからの入力を受けて取っている嗅内皮質ニューロンを同定する。さらに、「投射ニューロン選択的遺伝子導入法」を用いて嗅内皮質CB+ニューロンを選択的に標識し、CB+ニューロンがどのような経路で海馬に情報を送っているのか明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初は海外学会の出張旅費の支出を考えていたが、別の外部資金で賄うことができたため出張旅費分は使用しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文の英文添削・投稿費、及び消耗品に使用予定。
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