2015 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍抑制因子Wwoxの中枢神経系構築過程における機能の解明
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15K18368
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
栃木 裕貴 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 助教 (40571576)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Wwox / LDEラット / 髄鞘 / オリゴデンドロサイト / オリゴデンドロサイト前駆細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、腫瘍抑制因子Wwoxの中枢神経系構築過程における機能を明らかにすることを目的として、Wwox遺伝子に機能喪失変異をもつ LDEラットの脳病変の発生メカニズムを解析した。21日齢のLDEラットの脳組織を用いた組織学的解析では、中枢神経系を構築する細胞群のうち、オリゴデンドロサイトの著しい減少に加え、ニューロンならびにアストロサイトの減少が観察されたが、ミクログリアに明らかな差異は観察されなかった。正常ラットのこれらの細胞におけるWwoxタンパク質の発現について、二重染色法による検討を行ったところ、ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトにおいて陽性像が観察されたが、ミクログリアでは観察されなかった。すなわち、中枢神経系を構築する4種類の細胞のうち、神経幹細胞に由来する細胞群でWwoxタンパク質の発現が観察された。これらの結果はWwoxが神経幹細胞の機能に影響することを意味するかもしれないが、LDEラットの脳において髄鞘の低形成が観察されていることは、特にオリゴデンドロサイト系譜細胞の増殖と分化において重要な役割を担う可能性がある。この仮設を証明するため、オリゴデンドロサイト前駆細胞のマーカーの1つであるO4の分布を調査したところ、LDEラットの脳においてシグナルの増強が観察された。この結果はWwoxの欠損がオリゴデンドロサイト前駆細胞の正常な分化を阻害していることを示唆する。現在進行中の脳組織の経時的解析とオリゴデンドロサイト系譜細胞の分離培養系を用いた分化誘導試験を遂行することには、中枢神経系の構築過程における腫瘍抑制因子Wwoxの新たな機能を見出すことに繋がると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、腫瘍抑制因子Wwoxの中枢神経系構築過程における機能を明らかにすることを目的として、1.オリゴデンドロサイト系譜細胞が旺盛に増殖、分化、髄鞘形成する期間に、正常ならびにLDEラットの脳から経時的に組織標本を作製し、解析を行う。2.正常ならびにLDEラットの脳よりオリゴデンドロサイト前駆細胞初代培養細胞を作製し、Wwox欠損の影響を比較検討する。というin vivoまたはin vitro の2つのパートに分けて計画されている。in vivoでの解析について、平成27年度は特に、経時的な脳組織の採材と組織学的解析に注力した。その結果、5、10、15、21日齢の脳組織サンプルの作成を完了し、順次免疫組織染色による解析を進めている。当初予定していたマーカー分子の一部については解析に至っていないが、平成28年度に実施予定だったウェスタンブロット解析を先行して実施し、Wwoxタンパク質量や各種細胞マーカーの日齢変動について既に成果を得ている。平成28年度は不足しているマーカー分子の染色を進めるとともに、リアルタイムPCRによるmRNA発現量の変化についても併せて検討する。in vitroでの解析について、平成27年度はオリゴデンドロサイト前駆細胞の分離培養系の確立を主目的とし、これを完遂した。平成28年度は研究計画に沿って、この分離細胞培養系を用いた解析を順次進める。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの解析から、成熟オリゴデンドロサイトにWwoxタンパク質が局在することが証明されている。しかしながら、その発現や局在が生後の中枢神経系の発達に伴ってどのように変動するかは不明である。そこで、中枢神経系でのWwoxの発現動態を平成27年度に採材した5, 10, 15, 21日齢の正常ラットの脳組織で経時的に解析する。具体的にはオリゴデンドロサイト前駆細胞から成熟細胞への分化の過程において、Wwoxの局在がどのように変化するのか、各種マーカーとWwoxの共染色を実施することにより明らかにする。また、同様の実験を平成27年度に確立したオリゴデンドロサイト前駆細胞の分離培養系を用いて実施する。その際、LDEラットから同様の細胞を作製し、正常動物由来の細胞との差異について検討を行う。具体的にはMBPなどの髄鞘マーカータンパク質の発現量の変化や、オリゴデンドロサイト前駆細胞の分化に関わる転写因子群のうちOlig1, Olig2, Nkx2.2, Sox10らのmRNA発現量測定する。これらの検討を行い、平成27年度に得られた結果と併せて考察することにより、オリゴデンドロサイト系譜細胞の増殖、分化、ならびに細胞機能におけるWwoxの役割を明らかにする。
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