2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K18370
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
田中 良法 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 研究員 (00747933)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | プロフィリン1 / 筋萎縮性側索硬化症 / TDP-43 / プリオン |
Outline of Annual Research Achievements |
孤発性及び多くの家族性筋萎縮性硬化症(ALS)では、界面活性剤不溶性でリン酸化された病的なTDP-43が蓄積する。病的なTDP-43は異常プリオンのように、正常なTDP-43を異常型に変化する性質があることが知られている。本研究では、近年家族性ALSの原因として同定されたプロフィリン1遺伝子(PFN1)の変異がTDP-43の蓄積に与える影響について解析を行った。 細胞に変異型PFN1を発現させると、ユビキチン及びp62陽性の界面活性剤不溶性のPFN1凝集体を細胞質内に形成し、その一部にTDP-43が共局在した。プロテアソームの阻害剤であるMG132を添加すると、変異型PFN1を発現した細胞ではアグリソーム様の構造物の形成が阻害され、変異型PFN1及びTDP-43の蓄積が亢進した。リソソームの阻害剤であるbafilomycinA1を添加すると、変異型PFN1を発現した細胞ではオートファジーの指標であるLC3-IからLC3-IIへの変換が阻害され、TDP-43の蓄積が亢進した。変異型PFN1とTDP-43を共発現した細胞では、TDP-43の蓄積が亢進し、リン酸化TDP-43の蓄積も認められた。TDP-43の部分欠損体を用いた解析から、C末端側のTDP-43が変異型PFN1の発現によるTDP-43の蓄積亢進に必要であることが明らかとなった。さらに、PFN1変異体を発現させた細胞から得られた界面活性剤不溶性画分をシードとしてTDP-43発現細胞に導入すると、TDP-43の不溶化が亢進し、細胞内にリン酸化TDP-43が蓄積した。 以上の結果から、ALSの原因となる変異によって凝集したPFN1は、TDP-43を細胞質内で捕捉すること、さらには、捕捉したTDP-43の構造変化を促すことで、TDP-43のシード依存的な蓄積を誘起するという新たなALS発症メカニズムが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ALSの原因となるプロフィリン1(PFN1)の変異が細胞毒性を発揮する機構を培養細胞を用いて解析した結果、変異によって生じたPFN1凝集体はアグリソームの形成やオートファジーを阻害し、異常タンパク質の蓄積を促進させる可能性が考えられた。また、PFN1凝集体はALSの中心的な病因タンパク質であるTDP-43と共凝集体を形成した。さらに、変異型PFN1の発現によって、異常プリオン様の性質(正常なTDP-43を異常型に変換する)をもった病的なTDP-43が形成され、界面活性剤不溶性でリン酸化されたTDP-43が蓄積した。以上の結果から、PFN1凝集体は病的なTDP-43形成の足場となることが考えられた。 本研究は、PFN1変異によって生じる細胞毒性機構を明らかにするだけでなく、TDP-43との関係を明らかにするなどALSの発症機構にも踏み込んだ研究となっており、当初の計画以上に進展していると言える。なお、本研究の結果は国際的な学術誌であるHuman Molecular Genetics誌掲載済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、以下の2つの研究(研究1及び2)を進める。 研究1:孤発性ALS患者の脊髄において、PFN1とリン酸化TDP-43が共局在していた。PFN1とTDP-43は相互作用があるため、TDP-43が蓄積した結果、PFN1が捕捉されている可能性が考えられた。一方で、PFN1が老化によってアセチル化などの翻訳後修飾を受けた結果、凝集性が高まり、TDP-43を捕捉した可能性も考えられる。そこで、今後の研究では孤発性ALS患者の脳・脊髄に蓄積したPFN1の翻訳後修飾等について、質量分析計を用いて解析する。同定された修飾等があった場合には、培養細胞を用いて、PFN1の凝集性などに与える影響を解析する。 研究2:培養細胞を用いた解析の結果、PFN1凝集体はユビキチン、p62及びLC3陽性であった。PFN1凝集体が形成された細胞では、LC3がPFN1凝集体に捕捉され、LC3-IからLC3-IIへの変換が阻害されるため、オートファジーが抑制される。さらに、プロテアソーム阻害時に形成されるアグリソーム様の構造物も形成されない。先行研究において、LC3はp62と結合すること、そしてアグリソームの形成にはp62が必要であることが示されている。ユビキチンとp62が結合することを考慮すると、上記の表現系はPFN1凝集体がユビキチン化されることに起因するのかもしれない。そこで、PFN1凝集体のユビキチン化がオートファジーやアグリソームの形成に与える影響を解析する。
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Causes of Carryover |
必要な試薬があったものの、残額では購入できなかったので、所属研究室に購入して頂いた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の進行と共に新たな課題も生じたので、今後の研究の推進方策で述べたような研究に翌年度分と合わせて使用する。
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[Journal Article] Phosphorylation of TAR DNA-binding Protein of 43 kDa (TDP-43) by Truncated Casein Kinase 1δ Triggers Mislocalization and Accumulation of TDP-43.2016
Author(s)
Nonaka T, Suzuki G, Tanaka Y, Kametani F, Hirai S, Okado H, Miyashita T, Saitoe M, Akiyama H, Masai H, Hasegawa M.
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Journal Title
The journal of Biological Chemistry
Volume: 291
Pages: 5473-83
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Progranulin mediates neurovascular protection via multiple therapeutic effects in experimental acute ischemic stroke.2015
Author(s)
Kanazawa M, Kawamura K, Takahashi T, Miura M, Tanaka Y, Koyama M, Toriyabe M, Igarashi H, Nakada T, Nishihara M, Nishizawa M, Shimohata T.
Organizer
Brain and Brain PET 2015
Place of Presentation
バンクーバー(カナダ)
Year and Date
2015-06-27 – 2015-06-30
Int'l Joint Research
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