2015 Fiscal Year Research-status Report
新規Olig2結合候補因子によるオリゴデンドロサイト分化促進機構の解明とその応用
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15K18373
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
備前 典久 新潟大学, 医歯学系, 助教 (40751053)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | オリゴデンドロサイト / Olig2 / 分化促進 / 脱髄疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、オリゴデンドロサイト(OL)分化に必須の転写因子であるOlig2の結合因子探索によって新たに同定したOligodendrocyte-inducing factor (OIF)の分化促進機構を解明すると共に、より効率的なOL分化誘導法の確立を目指す。 本年度は、(I) OIFによるOL分化およびミエリン形成誘導の検討、(II) OIFによるOL分化およびミエリン形成の分子メカニズムの解明を進めた。 まず(I)において、OIFによるOL分化誘導をタンパク質レベルおよび細胞形態レベルで確認するために、培養神経幹細胞にOIFを強制発現後、各種OL特異的マーカー抗体で免疫染色を行ったところ、有意なOL分化促進作用は見られなかった。しかし、野生型6週齢マウスの大脳皮質にアデノ随伴ウイルスを介してOIFを導入し、OLマーカー抗体で免疫染色したところ、CC1陽性OLが劇的に増加した。この作用は脱髄疾患モデルマウスであるshiverer mouseの大脳皮質においても認められ、さらに神経軸索への突起伸長も確認された。興味深いことに、OIFの全長型であるOlig2-binding protein 2 (OBP2)を神経幹細胞特異的に欠損させたマウス胎生後期脊髄において、OL分化の顕著な欠失が見られた。 (II)においては、OIFがOL関連遺伝子の発現を転写レベルで制御しているかを検討するために、マウスPLPおよびMBPプロモーターにおけるルシフェラーゼアッセイを行ったところ、OIFによりPLPおよびMBPプロモーター活性が有意に増強された。 以上の結果から、OBP2のOlig2結合領域を含むOIFは野生型および脱髄疾患モデルマウス脳内において、OL分化を有意に促進することが明らかとなり、この作用はOIFによる各OL関連遺伝子の転写活性促進が背景にあることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養神経幹細胞におけるOIFのOL分化促進作用は確認できなかったが、マウス脳内においては顕著な分化促進が認められた。また、その分子メカニズムの一端としてOIFによる各種OL遺伝子の転写促進作用が明らかになった。さらにOBP2ノックアウトマウスの解析から、OBP2のOlig2結合領域を含むOIFがOL分化機構において必須であるという重要な知見を得ることができた。一方で、当初予定していた電子顕微鏡によるミエリン構造解析は、現時点では実験系の立ち上げ段階であり、来年度以降に持ち越しとなったが、来年度に予定していた脱髄疾患モデルマウスにおける、OIFによるOL分化誘導実験を前倒して進めることができたため、実験計画全体としては概ね順調であると判断した。次年度は、これらの研究成果をまとめて学会発表を行い、論文投稿を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、(I) OBP2/OIFによるOL分化およびミエリン形成誘導の検討、(II) OBP2/OIFによるOL分化およびミエリン形成の分子メカニズムの解明に取り組む。 (I)においては、野生型および脱髄疾患モデルマウスを用いて、OIF強制発現によるミエリン形成促進作用を電子顕微鏡下で解析する。OBP2およびOIFによるOL分化誘導機構をさらに詳しく解析するために、神経幹細胞および各種OL特異的Creドライバーマウスを用いて、OBP2コンディショナルノックアウトマウスを作製し、神経幹細胞からミエリン形成に至るまでの各分化段階におけるOBP2の影響を、免疫染色で明らかにする。OL分化過程におけるOBP2の細胞内動態を解析する。そのために免疫組織化学に適用がある抗OBP2抗体を作製する。 (II)においては、前年度の研究成果より、OIFおよびOBP2が標的遺伝子の発現を転写レベルで制御することが示唆されたことから、既知のOL分化促進転写因子群とOBP2との相互作用を免疫沈降法とウエスタンブロッティングより検討する。また、OBP2ノックアウトマウスと野生型マウス脳内における遺伝子発現変化を網羅的に解析することで、OBP2およびOIFの標的遺伝子を特定する。Olig2とOBP2/OIFとの相互作用を解析するために、子宮内電気穿孔法を用いて、マウス大脳皮質にOlig2とOBP2/OIFを共導入し、OL分化促進が相乗的に誘導されるかを検討する。
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Causes of Carryover |
今年度実施予定であった、電子顕微鏡を用いたOIFによるミエリン形成解析が実験系立ち上げの段階にとどまったため、本格的な解析のための経費を次年度に繰越して計上した。また、今年度行った培養神経幹細胞を用いたOIF強制発現実験において、OIFがOL分化促進に影響しないという予期せぬ結果となり、早い段階で脳を用いたin vivo実験に切り替えたため、実際の細胞培養試薬および器材費が当初の見積もりよりも低くなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由で生じた次年度使用額は、まず昨年度実施予定であった電子顕微鏡を用いたOIFによるミエリン形成解析に用いる。また、市販の抗OBP2抗体で免疫組織化学に使用できるものがなかったため、当初計画していなかった免疫組織化学に適用可能である抗OBP2抗体作製に使用する予定である。さらに、次年度は多種類のCreドライバーマウスと、それらから作製したOBP2コンディショナルノックアウトマウスを飼育する必要があるので、マウスの飼育費としても使用する予定である。
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[Journal Article] A Synthetic Polymer Scaffold Reveals the Self-Maintenance Strategies of Rat Glioma Stem Cells by Organization of the Advantageous Niche2016
Author(s)
Kouichi Tabu, Nozomi Muramatsu, Christian Mangani, Mei Wu, Rong Zhang, Taichi Kimura, Kazuo Terashima, Norihisa Bizen, Ryosuke Kimura, Wenqian Wang, Yoshitaka Murota, Yasuhiro Kokubu, Ikuo Nobuhisa, Tetsushi Kagawa, Issay Kitabayashi, Mark Bradley, and Tetsuya Taga
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Journal Title
Stem Cells
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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