2015 Fiscal Year Research-status Report
ヒトGPCRであるドパミンD2受容体のX線結晶構造解析
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15K18376
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 到ヒョン 京都大学, 医学研究科, 特定研究員 (50721883)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | X線結晶構造解析 / GPCR / 膜蛋白質 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度に予定されていた研究計画では、DRD2の安定化変異体の作成、大量 発現及び、発現したタンパク質の精製を行うことであった。現状では、初年度の計画である上記の3つのことについては順調に進んでいると考えられる。DRD2は比較的長い細胞内第3ループを有しているため、構造的フレキシビリティが非常に高く、不安定な状態で発現する傾向がある。細胞内第3ループにT4リソチームやアポ型チドクロームB562 の変異体 (bRIL) 等を挿入することや、N末端/C末端を欠損することによって安定化変異体の作成に成功した。これらの安定化コンストラクトは酵母Saccharomyces cerevisiaeによるGFPハイスループット法を用いてそれぞれの安定性を評価し、最も単分散性が良い変異体を選別した。昆虫細胞Spodoptera frugiperda (Sf9) を用いて、選別したDRD2変異体の発現系を構築し、大量のDRD2を生産することができた。また、生産したDRD2変異体については精製を行い、最終的には高純度のタンパク質を大量に手に入れることができた。これらの精製標品におけるゲルろ過の単分散性や熱安定性など、その性質を評価した後、安定な性質を持つ変異体から順次的に結晶化を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度において、達成すべき内容は結晶化まで持っていけるDRD2の安定化変異体の作製及び大量生産であった。安定的に発現するDRD2変異体を作製において、まずは細胞内第3ループに構造的に安定なタンパク質を挿入することによって受容体の安定性を向上させることを試みた。T4リソチーム (T4L)、アポ型チドクロームB562 の変異体 (bRIL)、グリコーゲンシンターゼ (PGS)、ベーターラクタマーゼ (Toho-1) など様々なタンパク質を挿入することにより安定的に発現するDRD2-bRIL変異体を製作することができた。この変異体においてN末端やC末端の欠損、 受容体内部の点変異導入などを行い、最も安定的に発現する変異体を作製した。この変異体における昆虫細胞での大量生産系、 精製系の構築を行い、最終的に比較的高純度のDRD2変異体を大量に生産することに成功した。現在のところ、Sf9昆虫細胞の1 L培養で約1 mg以上のDRD2精製標品を手に入れることができる。これらの点においては当該年度の研究目的を少しは達成していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針としては、精製ができたDRD2変異体について結晶化を行い、結晶を作ることである。まずは、DRD2変異体の精製標品について最終評価を合理的に行うことである。現在のところ、精製までできているDRD2変異体は10種類以上あるため、適切な評価方法を用いてその安定性を評価し、上位のものから順次結晶化を行う予定である。もし本年度中に結晶が得られた場合、SPring8のマイクロフォーカルビーム (BL32XU) を用いてデータ収集を行う。 以上が現状における本年度の基本的な推進方針である。しかしながら、データ収集に必要な良質のDRD2結晶を得ることは非常に難しいと思われる。構造解析に資するような結晶であるためには、結晶の大きさ、形なども非常に重要である。そのために、様々な条件下で結晶化を行い、できるだけ複数の条件で色々な結晶を作り、構造解析に適切な結晶を生産する予定である。また、DRD2の結晶が得られない場合に備えて本年度の前期から抗体製作に入る予定である。膜タンパク質の結晶化において抗体フラグメントは、親水性表面に特異的に結合することにより親水性領域を多くし、結晶の形成を助ける役割をする。DRD2に特異的に結合する抗体を生産し、結晶化に用いることができれば、結晶が得られる可能性が高くなると考えられる。これら様々な可能性を考慮した上本年度の推進方針を決定する予定である。
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Causes of Carryover |
酵母菌によるDRD2の安定変異体スクリーニングには、数多くの変異体を作成するために大量のカスタムDNAプライマーが必要である。また、動物細胞によるDRD2の大量生産には非常に高価な培地が大量に必要であり、そのために物品費として多くの予算を計上していた。しかしながら、安定変異体のスクリーニングによりいち早く安定的に発現するDRD2の変異体を作成する事ができ、また発現法や精製法の改良などによりその発現量が最大で3倍以上向上する事ができた。これらの結果により安定変異体スクリーニングおよび大量生産のコストが低下した事が次年度使用額が生じた理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には主にDRD2の結晶化を行う予定であるため、タンパク質の結晶化に使用する結晶化用キットおよびその他の物品を購入する予定である。また、次年度からDRD2を特異的に認識する抗体を作成する予定であるため、マウスなどを使った動物実験に予算を使用する予定である。
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