2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K18382
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
荻野 一豊 青山学院大学, 理工学部, 助手 (20551964)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 抑制性シナプス / シナプス可塑性 / グリシン受容体 / CaMKII / Gephyrin |
Outline of Annual Research Achievements |
シナプス活動に応じたシナプス伝達効率の増減はシナプス可塑性と呼ばれ、学習や記憶の分子基盤であると考えられている。脳幹や脊髄における主要な抑制性化学シナプスであるグリシン作動性シナプスは海馬など大脳の一部においても形成され、神経ネットワークの興奮性を調節するなど重要な役割を担っている。しかし、そのシナプス可塑性の仕組みについての理解は、他の主要な化学シナプスであるグルタミン酸作動性シナプスやGABA作動性シナプスに比べて進んでいない。これまでに、繰返し音刺激がマウスナー細胞におけるグリシン性伝達を増強することが報告されているが、その分子機構は不明である。 研究代表者はゼブラフィッシュのマウスナー細胞においてグリシン作動性シナプス増強を可視化することに成功している。本研究ではグリシン作動性シナプス増強の分子機構とそれをもたらすシナプス入力を明らかにすることを目的とした。グルタミン酸作動性シナプスでは、細胞内カルシウム濃度の上昇で活性化されるCaMKIIがシナプス増強に関与することが知られている。グリシン作動性シナプスにおいてもCaMKIIの関与があるのかを検証するため、マウスナー細胞特異的に常時活性型CaMKIIまたはドミナントネガティブ変異CaMKIIを発現させることで、マウスナー細胞のCaMKII活性を操作する実験系を確立した。常時活性型CaMKIIによるCaMKII活性の上昇はグリシン作動性シナプス増強を誘導したが、ドミナントネガティブ変異CaMKIIによるCaMKII活性の抑制は、繰り返し音刺激によるグリシン作動性シナプス増強を抑制した。これらの結果はCaMKIIの活性化がグリシン作動性シナプス増強においてCaMKII活性が必須であることを示している。また、質量分析によってCaMKIIによって抑制性シナプスの足場タンパク質であるゲフィリンがリン酸化されることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究実施計画に基づき実施した研究によって、CaMKIIが繰返し音刺激とグリシン作動性シナプスの増強を繋ぐ分子であることが示された。この研究と並行して行っている遺伝子組換えゼブラフィッシュ系統の樹立も概ね順調に進んでいるので、本研究は当初の計画通りに進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究実施計画では、繰返し音刺激によるグリシン作動性シナプスの増強に関与するシナプス入力の同定を目標としている。音刺激は聴覚神経と抑制性介在神経を経由してマウスナー細胞に興奮性と抑制性のシナプス入力を与える。薬理遺伝学的手法を用いてマウスナー細胞の興奮性を操作することで、どちらの入力がグリシン作動性シナプス増強に重要であるかを明らかにするための解析を行う。
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Causes of Carryover |
平成27年度に予定していた研究が順調に進んだことにより、予定していたよりも必要経費が少なくなったため。 平成28年度の研究遂行に想定外の支出が必要になる可能性を考慮し、今年度は他の予算からの支払いを行い、本研究費を持ち越した。また、学会参加及び発表のための旅費を計上していたが、発表内容などから他予算による支払いがより適切であると判断し、本予算の旅費を執行しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
持ち越した研究費は、本年度に樹立したゼブラフィッシュの維持管理費やデータ取得解析のための機器購入などに充てることですべて使用する。
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