2015 Fiscal Year Research-status Report
GATA1関連白血病幹細胞を維持する遺伝子発現制御機構の解析
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15K18395
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
長谷川 敦史 東北大学, 加齢医学研究所, 特別研究員(PD) (80747460)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | DS-AMKL / 白血病幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ダウン症随伴急性巨核芽球性白血病(DS-AMKL)を支える白血病幹細胞において特異的な遺伝子発現プロファイルの解析を目的とした。 白血病細胞を安定的に増幅・供給できる実験系を樹立するため、超免疫不全マウスを用いた、患者由来DS-AMKL細胞の異種移植系を立ち上げた。異種移植マウスにおいて、巨核球特異的CD41a表面形質を発現するAMKL様芽球の循環を確認し、また移植後10週目以降を至適解析時期と設定することができた。 同マウスを用い、セルソーターによる白血病細胞の分画化・単離・移植実験を行うことで、白血病幹細胞濃縮分画の同定を試みた。造血幹細胞や従来から多くの報告があった白血病幹細胞に特異的な表面形質であるCD34の有無を第一の指標とした。その結果、CD34陰性分画移植群において白血病発症を認めたことから、同分画における白血病幹細胞の存在が示唆された。CD34陰性分画において、白血病幹細胞がより濃縮される細胞集団を単離するために、ヘキスト色素染色性の差異を利用した分画法を追加した。ヘキスト低染色性細胞集団および高染色性細胞集団をそれぞれ検出し、移植実験を行った結果、ヘキスト高染色性細胞集団移植群において白血病発症を認めた。以上の解析結果より、本DS-AMKLにおける白血病幹細胞は、CD34陰性分画中のヘキスト高染色性細胞集団に存在することが示唆された。 骨髄性白血病を対象とした多くの先行研究では、CD34陽性分画に白血病幹細胞が濃縮されると報告されている。一方、本AMKLにおいては、CD34陰性分画に白血病幹細胞が存在するという点で非常に珍しい型の白血病であると予想される。本研究は、DS-AMKLの白血病幹細胞同定に迫る画期的アプローチであり、白血病幹細胞分類の新たな指標を提唱できるものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
白血病細胞を安定的に増幅・供給できる実験系として、超免疫不全マウスへの、患者由来DS-AMKL細胞の異種移植系を立ち上げた。異種移植マウスにおいて、巨核球特異的CD41a表面形質を発現するAMKL様芽球の循環を確認し、また移植後10週目以降を至適解析時期と設定することができた。セルソーターによる白血病細胞の分画化・単離および移植実験により、CD34陰性分画および同分画中のヘキスト高染色性細胞集団を移植することで白血病発症を認めた。このことから、本DS-AMKLでは、CD34陰性分画中のヘキスト高染色性細胞集団における白血病幹細胞の存在が示唆される結果を得ることができた。 白血病幹細胞の完全な同定までは至っていないが、今後の解析のための指標は得られたため、本研究は概ね進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
白血病幹細胞濃縮分画が真に濃縮される分画を絞り込むために、他の表面形質発現プロファイル、および細胞周期の進行度に基づくさらなる指標を加えた分画法を確立する。特に、増殖休止状態にある細胞集団をPyronin-Yおよびヘキスト処理により、また抗癌剤耐性を持つ細胞集団を白血病発症マウスへの5-FU投与によりそれぞれ検出し、セルソーターによる対象分画の回収と移植実験を行う。幹細胞の機能的特性に基づき、白血病幹細胞が濃縮される細胞集団を同定することができた際には、同分画における遺伝子発現プロファイルをRNA-Seqもしくはマイクロアレイにより網羅的に解析することで、非幹細胞集団との質的差異を生み出す分子機構を明らかにする。
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Causes of Carryover |
学会発表の為の旅費として申請していたが、研究進捗状況により、参加申し込みの時点でデータが揃っていなかったため、学会発表ができなかった。実験に使用する物品については、当該年度中の使用に十分な量を購入済みであったため、未使用分を物品購入費として割り当てることはできなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
白血病幹細胞同定のための、フローサイトメトリー解析に用いる試薬、抗体類の購入費用とする。また、遺伝子発現解析のための試薬物品類の購入費用とする。
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