2015 Fiscal Year Research-status Report
CCL3-CCR5を介したがん微小環境制御による、がん悪性化進展治療へ向けた研究
Project/Area Number |
15K18406
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
佐々木 宗一郎 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (50583473)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 大腸がん / CCR5 / 線維芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで当研究室では、AOM+DSS投与による大腸がん発症モデルにおいて、CCL3-CCR5を介したがん微小環境構築による、腫瘍増殖促進機構について報告してきた。引き続き、ヒト大腸がんに類似した病態でのCCL3-CCR5系の役割を解明するために、マウス大腸がん細胞株colon26を野生型マウス、CCL3欠損マウス、CCR5欠損マウスの盲腸に接種し、継時的に解析を行った。その結果、野生型とCCL3欠損マウスに比較して、CCR5欠損マウスにおいて有意な腫瘍増殖抑制が確認された。そこで、CCL3-CCR5系によるがん微小環境制御機構の存在に着目し、初めに大腸がんとの関連が報告されている炎症性細胞の浸潤についての解析を行った。解析の結果、腫瘍部位において好中球、マクロファージ、T細胞などの細胞集団は野生型とCCR5欠損マウスとの間で有意な差は認められず、今回のモデルにおいて、これらの細胞の関与は低いものを結論付けた。 次に、CCL3-CCR5系を介した腫瘍部位への線維芽細胞の浸潤についての解析を行った。結果、CCR5欠損マウスにおいて、野生型と比較して、腫瘍部位への線維芽細胞の浸潤が有意に抑制されていた。詳細に解析を行うと腫瘍の増殖と腫瘍部位への線維芽細胞の浸潤に有意な相関関係がみられた。腫瘍関連性線維芽細胞はCAFと呼ばれ、亜集団の存在が報告されている。そこでフローサイトメトリーを用いて、CAF亜集団の同定を行った。検討の結果、これらの既知のマーカーでは変化が確認できた亜集団は存在しなかった。その一方で、組織学的な解析の結果、野生型とCCR5欠損型マウス間において腫瘍内のCAFのクラスタリングの形成に差があることが確認された。クラスタリングによって、増殖因子の発現が増加するという報告もあることから、現在その点に関しての解析から、CCR5を介した腫瘍増殖促進機構の解明を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
colon26を用いた大腸がんモデルは野生型マウス、CCL3遺伝子欠損マウスならびにCCR5遺伝子欠損マウスの病理学的検討に用い予定の組織切片作成用サンプルはすでに回収済みである。また、遺伝子発現パターン検討に用いる予定のサンプルもすでに回収済みであり、必要なcDNA合成もすでに完了している。 腫瘍組織内における炎症細胞のプロファイリングや線維芽細胞の亜集団の解析も終了し、現在は線維芽細胞の動態の検討を行っている。 一方で、CCR5に対する阻害作用をしめすマラビロクを用いた阻害実験の検討も行っており、一定の結果を得ている。 以上の点から、本研究は当初に予定していた本年度の計画におおむね沿った進行具合であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの研究で、マウス大腸がん細胞株colon26の同所接種モデルにおいて、腫瘍増殖の過程において炎症細胞ではなく、線維芽細胞の集積が重要であることを明らかとした。さらにCCR5欠損マウスでは野生型と比べて、線維芽細胞の集積が有意に抑制されることも明らかとした。 今後は集積している線維芽細胞を継時的に採取し、機能解析、遺伝子発現パターン解析を介して、線維芽細胞の集積と腫瘍増殖との関連性を結びつけるメカニズムの解明を目指す。同時にマラビロクによる効果も明らかとし、臨床応用へ向けた解析を進める。
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Research Products
(5 results)