2015 Fiscal Year Research-status Report
Lats1キナーゼを介した新規EMT-MET制御機構の解明
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15K18408
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
向井 智美 大阪大学, 微生物病研究所, 特任研究員(常勤) (10706146)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Lats1 / EMT / MET / ZEB1 / Hippo pathway |
Outline of Annual Research Achievements |
Lats1はHippo pathwayのなかでも中心的な役割を担うSer/Thrキナーゼであり、Hippo pathwayが上皮細胞におけるEMTを制御することは報告されてきたが、間葉系細胞においてその役割は不明であった。そこで、申請者らは悪性度の高い間葉系様乳がん細胞であるMDA-MB-231細胞においてLats1をノックダウンしたところ、上皮マーカーであるE-cadherinの発現が上昇するというMET様の現象を見出し、さらにE-cadherinの転写調節をおこなうZEB1、RbをLats1がリン酸化することを明らかにした。これにより、間葉系様乳がん細胞ではHippo pathwayとは別に、ZEB1、Rbのリン酸化を介したE-cadherinの発現制御機構があると予測されたためその新規EMT-MET制御機構を明らかにする目的で、平成27年度は①Lats1によるZEB1、Rbのリン酸化部位の決定とリン酸化抗体の作製②MDA-MB-231におけるHippo pathwayのかかわり③非リン酸化型およびリン酸化模倣型変異体の作製とE-cadherin発現調節への寄与を確認した。①の結果Lats1がリン酸化する部位をそれぞれ一か所ずつ決定でき、特異的リン酸化抗体の作製が完了した。②ではMDA-MB-231細胞において各種タンパクのノックダウンによってMst2-Lats1-Yap経路はほとんど機能していないことが明らかとなった。③の結果、ZEB1非リン酸化型変異体の導入によってE-cadherinが上昇し、リン酸化模倣型変異体の導入によってE-cadherinの発現が減少した。以上の結果から、悪性度の高い間葉系様乳がん細胞においては、Hippo pathwayとは別の経路、Lats1-ZEB1経路によってE-cadherinの発現が調節されていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新規に決定したリン酸化部位に対する抗体を作製したところ、その品質が極めて優良で、組織染色にも使用できることがわかった。この結果をふまえ、臨床検体を用いて組織染色を行う段階にまで至っており、予想以上に良い結果を得始めている。また、本研究の成果を2015.12.1~4に開催された分子生物学会生化学会合同大会において口頭発表したところ、若手優秀発表賞に選出された。以上のことから、当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の結果をふまえ、平成28年度では①ZEB1のリン酸化の意義を詳細に解析すること、②ZEB1のリン酸化が実際の乳癌患者においての発現がみられるか、また悪性度の違いによって差がみられるかどうか、③マウスモデルの作製を試みる予定である。さらに④乳癌細胞だけではなく、他の癌種(口腔癌・悪性中皮腫など)においてもZEB1のリン酸化状態を確認する。これまでにLats2がSnailをリン酸化し、そのタンパク安定性を制御するという報告があるので、①についてはZEB1のリン酸化がタンパク安定性に寄与するかどうかを優先的に確認する予定である。その他に、リン酸化部位がZnフィンガーのリンカー部分であることから、DNAの結合能にも影響することが予測されるので、そちらも考慮する。
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