2015 Fiscal Year Research-status Report
NDRG1のマクロファージと血管新生を介したがん微小環境の制御と新規がん治療創出
Project/Area Number |
15K18411
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
渡 公佑 九州大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (90596834)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | NDRG1 / 血管新生 / マクロファージ / 破骨細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに、野生型マウスとN-myc downstream regulated gene 1(NDRG1)ノックアウトマウスへのがん細胞の皮下移植実験より、NDRG1ノックアウトマウスにおける腫瘍体積及び腫瘍内新生血管密度と浸潤マクロファージ数の減少を観察している。現在、さらにNDRG1ノックアウトマウスで、① 骨髄由来前駆細胞からマクロファージへの分化能の低下、② 腫瘍内より単離した腫瘍関連マクロファージでのVEGFを含むがん悪性進展関連因子の発現量の減少、③ 大動脈リングアッセイ法におけるVEGF特異的に誘導される血管新生の減少を観察している。これらの結果より、がん微小環境におけるNDRG1は腫瘍関連マクロファージの分化能や浸潤能、がん悪性進展関連因子の産生能の変化とVEGF特異的に誘導される血管新生を制御している可能性が考慮される。そこで本年度は以下のことを明らかにした。 1.マクロファージの分化能におけるNDRG1の関与:NDRG1ノックアウトマウス由来骨髄前駆細胞は野生型と比較して、マクロファージ系統細胞である①成熟型マクロファージ、②単球由来樹状細胞、③破骨細胞への分化能が有意に低下しており、それぞれ分化誘導因子刺激時の下流因子の活性が減少していることを明らかにした。 2.腫瘍関連マクロファージのがん悪性進展促進能の獲得におけるNDRG1の関与:放射線照射により骨髄抑制をおこなった野生型マウスに、がん細胞と共にNDRG1ノックアウトマウス骨髄細胞由来マクロファージをマトリゲル内に封入し移植したところ、野生型マウス骨髄由来マクロファージ封入時と比較して有意に新生血管密度の減少が観察された。 3.NDRG1のVEGF特異的に誘導される血管新生への関与:野生型マウスと比較してNDRG1ノックアウトマウスでは、①発生期における網膜血管形成が有意に遅延していた。②マウス角膜法におけるVEGF誘導の血管新生能が有意に低下していたが、FGF-2誘導の血管新生は同様に誘導された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はNDRG1ノックアウトマウスを駆使することにより、特にNDRG1のマクロファージ系統細胞の分化への関与を明らかにした。NDRG1ノックアウトマウスでは、NDRG1によるがん血管新生マクロファージへの分化が誘導されず、その結果、腫瘍内新生血管密度及び腫瘍体積の減少が観察されることを明らかにした。また、NDRG1ノックアウトマウスでは大腿骨の骨密度の増加とともに破骨細胞数が減少していることを観察した。しかし、マクロファージ系統細胞ではない骨芽細胞数には変化が見られなかった。 以上の結果より、NDRG1はマクロファージ系統細胞の分化に選択的に関与していることが明らかとなり、これらの結果は2016年1月のScientific Reportsに掲載された。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度はNDRG1のマクロファージの分化制御によるがん血管新生や骨代謝における役割に関する研究を主に進めた。 今後は、NDRG1の血管内皮細胞におけるVEGFシグナルへの関与を検討するため、それぞれのマウスの肺組織より血管内皮細胞特異的マーカーであるCD31の磁気ビーズ抗体を用いて単離した肺血管内皮細胞を用いたin vitro系で、① VEGF誘導の増殖能や管腔形成能、 ② VEGFR-2の細胞膜上での発現量、 ③ VEGFとVEGFR-2の結合能、 ④ VEGF刺激時の受容体や下流シグナルのリン酸化や脱リン酸化に関連する酵素、 ⑤ 血管新生能に関連するPDGFなどの受容体やインテグリンなどの発現量へのNDRG1の関与を共免疫沈降法やフローサイトメトリー法、ウエスタンブロティング法などを用いて明らかにする。さらには、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)を用いたin vitro系で、NDRG1やその関連因子のsiRNAや阻害剤処理によるVEGF/VEGFR-2シグナルや増殖能、管腔形成能を検討し、マウス肺血管内皮細胞を用いて観察された現象がヒト血管内皮細胞でも同様に観察されるか否か検討を行う。 また、NDRG1やその関連因子のがん治療標的としての有用性をマウス投薬治療実験系を用いて評価する。その結果、血管新生や腫瘍の増大、転移などのがん悪性進展への治療効果を検討する。
|
-
[Journal Article] Impaired differentiation of macrophage lineage cells attenuates bone remodeling and inflammatory angiogenesis in Ndrg1 deficient mice.2016
Author(s)
Watari K, Shibata T, Nabeshima H, Shinoda A, Fukunaga Y, Kawahara A, Karasuyama K, Fukushi J, Iwamoto Y, Kuwano M, Ono M.
-
Journal Title
Scientific Reports
Volume: 6
Pages: 19470
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
-
[Presentation] Novel anti-angiogenic cancer therapeutic strategy by targeting differentiated macrophage lineage cells through N-myc downstream regulated gene 1 (NDRG1)2015
Author(s)
K. Watari, T. Shibata, H. Nabeshima, A. Shinoda, Y. Fukunaga, A. Kawahara, K. Karasuyama, J. Fukushi, Y. Murakami, M. Kuwano, M. Ono
Organizer
AACR-NCI-EORTC International Conference on Molecular Targets and Cancer Therapeutics
Place of Presentation
アメリカ ボストン
Year and Date
2015-11-05 – 2015-11-09
Int'l Joint Research
-
-
-