2015 Fiscal Year Research-status Report
新規ヒストンシャペロンGRWD1のp53抑制と発がんへの関与
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15K18412
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
杉本 のぞみ 九州大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (00633108)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | GRWD1 / p53 / がん / Purα |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、DNA複製開始制御に重要なCdt1の新規結合タンパク質としてGRWD1を同定し、このGRWD1がヒストンシャペロンとして、複製ヘリカーゼMCM2-7のクロマチン装着を促進することを明らかにしてきた。GRWD1の更なる機能解明を目的に、マススペクトロメトリー解析により結合因子を網羅的に探索した。その結果、転写因子Purαを同定した。このPurαとGRWD1との関連を明らかにすることが本研究の目的である。 これまでの研究によって得られたデータから、GRWD1はPurαと協調して、がん抑制因子p53の転写活性化能を抑制的に制御していると考えられた。そこで本年度は、GRWD1のがん化への寄与を調べるため、GRWD1とがん遺伝子であるHPV16 (ヒトパピローマウイルス) のE7、活性型KRas (KRasG12V) を安定発現させた正常線維芽細胞を樹立し、軟寒天培地を用いたコロニー形成試験を行った。その結果、E7、KRas G12V、GRWD1発現はE7、KRasのみの発現よりも細胞の足場非依存性増殖を促進することが明らかになった。また、これらの細胞を用いてヌードマウスにおける腫瘍形成試験を行ったところ、GRWD1 (およびE7、KRas G12V) 発現細胞では腫瘍形成能を示した。さらに、PrognoScanと呼ばれるがん患者の予後と遺伝子発現の関連を示すデータベースから、GRWD1が過剰発現しているがん患者の予後が悪いことが示唆された。以上のことから、GRWD1はp53を制御する新たながん遺伝子として機能することが示唆された。この機能の少なくとも一部は、GRWD1とPurαとの結合を介したp53転写活性化能の抑制によるものだと考えられるが、他の経路が関与している可能性についても今後検討していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
軟寒天培地を用いたコロニー形成試験およびヌードマウスを用いた腫瘍形成試験から、GRWD1の過剰発現ががん化の一因となることを示唆する結果が得られた。このことは、種々のがん細胞でGRWD1が過剰発現していること、さらには、GRWD1の過剰発現が予後不良因子の一つであるという、PrognoScanのデータと一致しており、大変興味深い結果だと言える。GRWD1とPurαによるp53転写活性化能の抑制が、がん化能の一端を担っていると考えているが、他の経路も関与している可能性については今後の検討課題である。
また、当初の計画では、本年度はChIP-qPCR assayにより、GRWD1およびPurαがp53標的因子のプロモーターに結合するか、その結合がp53依存的なのかなどを調べる予定であった。しかし抗体の特異性に問題が生じたため、特異的抗体の作製を再度行った。具体的な検証については次年度行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
GRWD1、Purαおよびp53の結合様式をChIP-qPCR法を用いて解析する。具体的には、新たに精製した抗GRWD1抗体を用いて、GRWD1およびPurαがp53標的因子のプロモーターに結合するのか、その結合がp53依存的かを調べる。さらに、p53の標的プロモーターへの結合はGRWD1依存的なのかを調べるため、GRWD1に対するsiRNAを用いたChIP assayも行う。あるいは、ブレオマイシン処理等によってしてDNA損傷を与えp53を活性化させた細胞を用いて、上記結合が変化するのかも調べる。また、FLAGタグ付きのGRWD1を発現させた細胞を用いて抗FLAG抗体を使用したChIP assayも行い、結合様式とその依存性を詳細に解析したい。
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Causes of Carryover |
上述したように、これまで使用していた抗GRWD1抗体の特異性に問題が生じたため、新たに抗GRWD1抗体の精製を行った。そのため、その後の解析の一部が次年度にずれ込んだ。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述した今後の研究方針に従い、平成28年度の研究費と併せ、研究の邁進のために適切に執行していきたい。
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Research Products
(6 results)