2016 Fiscal Year Research-status Report
DNA複製阻害と細胞分裂促進を組み合わせた新規制がん戦略の開発
Project/Area Number |
15K18423
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
覺正 直子 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 研究員 (30599593)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Cdc7キナーゼ / Wee1キナーゼ / 細胞周期 / S期 / M期 / がん細胞死 / キナーゼ阻害剤 / DNA複製 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん細胞のwholemarkと言われる遺伝的不安定性は、主に細胞周期進行に伴う染色体の複製・伝搬の異常に起因する。細胞周期のS期とM期が連動して秩序正しく進行する事によりゲノムは安定に維持される。がん細胞においてはこれらの連係が異常になる事によりゲノム不安定性が誘導される例が知られている。逆にこれはがん細胞の脆弱性であり、治療の標的となる。申請者はS期を制御するCdc7キナーゼの構造・機能解析の過程でこれを阻害することにより多くのがん細胞において特異的に細胞死が誘導される事を見いだした。さらにこの細胞死は主に異常なM期進行に伴い誘導される。申請者はCdc7阻害によるS期の阻害が複製進行に遅延をもたらし、その結果がん細胞においては未複製領域が残存した状態で異常なM期に進行する事により細胞死が誘導されるという仮説を提案した。更にこの仮説に基づきS期阻害とM期促進を組み合わせて効率よいがん細胞死を誘導するという戦略を提案した。本研究ではこれらの仮説を検証し、がん細胞死誘導のメカニズムを解明し、さらに有効な制がん戦略を策定する。 1 制がん剤としても頻繁に用いられる5FU(フルオロウラシル)とMK1755の併用によってもヒト子宮頸がん細胞HeLaにおいて効率よく細胞死を誘導できた。 2 Lovo(結腸腺癌細胞), CCRF-CEM(白血病細胞), HCT-15(大腸癌細胞)においてHU+MK1755の併用による強いSynergyが観察された。特に、CCRF-CEM(白血病細胞)は、単独ではほとんど影響ないが、併用によりとくに強い細胞死が観察された。 3正常細胞(WI38; ヒト皮膚由来繊維芽細胞)では、HU+MK1755の細胞周期への影響は観察されなかった。 4 正常細胞においてHU+MK1755による細胞死誘導を阻害する役割をはたしている因子を同定するためにアッセイ系を樹立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Colo205(大腸がん)細胞あるいはHeLa(子宮頸がん)細胞を用いて、細胞周期を同調して、薬剤を添加し、S期終了時のDNAを回収し、そのDNA含量をMicroarray-based Comparative Genomic Hybridizationにより定量する実験を行っていたが、細胞同調の条件を設定するために時間を費やした。ようやくDNAを回収したが、まだ解析にかけていない状態である。また、正常細胞においてS期-M期のカップリングを担う因子を探索するために、siRNAライブラリーのスクリーニングを行おうとしているが、スクリーニング解析用機器(Image Xpress)の細胞死解析の条件設定などに時間がかかり、ようやく開始したところである。
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Strategy for Future Research Activity |
浮遊細胞である白血病細胞CCRF-CEMではその効果はとくに顕著であることを発見した。そこで、そのほかの血球系がん細胞株、HL-60(ヒト前骨髄性白血病), K562(ヒト慢性骨髄性白血病), Jurkat(ヒト白血病T細胞株), Molt-4(ヒト急性リンパ芽球性白血病[T細胞])、Raji(バーキットリンパ腫), THP1(急性単球 性白血病)などで併用の効果を調べる。 HU以外のS期阻害剤(Aphydicolin, Cyclophosphamid, bleomycin, adrenamycinなど)とMK1755との組み合わせで細胞死誘導を解析する。 正常細胞においては、複製の終了と細胞分裂期の進行を連動させるチェックポイントシステムが作動するため、複製が終了しない間は分裂期への進行を停止するシステムが作動し、細胞死が回避されると考えられる。そこで、Cdc7阻害あるいはCdc7+Wee1阻害時に、正常細胞の細胞死を誘導する表現型を指標に、siRNA/shRNAライブラリーのスクリーニングを行い、複製終了と分裂期開始のチェックポイン制御に関与する因子を探索する。siRNA/ shRNAライブラリーのほかに、Cas9/CRISPライブラリーの使用も試みる。
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Causes of Carryover |
Microarray-based Comparative Genomic Hybridizationにより、薬剤により処理した細胞の、ゲノムコピー数測定の実験を行う予定であったが予備実験に時間を費やしたために 遂行できずそのための経費を使用しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ゲノムコピー数測定のために必要な経費として使用する予定である。
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