2015 Fiscal Year Research-status Report
疾患特異的な質的変化を示す腫瘍マーカーペプチドの探索
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15K18433
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
増石 有佑 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 特任助教 (20626767)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | CEA / 腫瘍マーカー / 質量分析装置 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度はCEAのIP-MRM法の条件検討を行った。まず、定量解析のためのCEA標準品の発現プラスミドを構築した。本プラスミドは目的遺伝子の挿入部位の上流に分泌シグナルをコードしていることから、目的タンパク質を培地中に発現させることができ、N末端およびC末端にそれぞれFLAGタグとBNCタグ、さらにMRM定量用のペプチドを付加した融合タンパク質を発現するように設計した。SILAC培地で培養した293T細胞にリポフェクション法を用いてCEA 発現プラスミドをトランスフェクションし、48時間培養した後、培養上清を回収した。回収した培養上清に対し、FLAGおよびBNC抗体を用いたIPを行った。トリプシン消化後、MRM定量用の標準ペプチドを加え、QTRAP 5500(AB SCIEX)を用いてMRM測定を行い、CEAの標準品の濃度を算出した。次に、CEAのIP(免疫沈降法)の条件検討を行った。回収した培養上清に対し、CEA抗体を用いたIPを行った後、CEA濃度を全自動酵素免疫測定装置 AIA-600Ⅱ (東ソー)で測定しIP効率を算出した。95%以上のIP効率を示す最適なIP条件の検討を行った。次にCEAのMRM法の条件検討を行った。精製したCEA トリプシン消化ペプチドを重酸素水中でPNGaseによるグリコアミダーゼ消化を行いLTQ Orbitrap Velos(Thermo Fisher Scientific)を用いて、LC-MS/MS解析を行った。同定されたCEA由来の多数のペプチド情報を基にMRMチャネルを作成し、QTRAP 5500を用いてMRM解析の条件検討を行った。次にCEAが非常に高値の大腸癌患者血清に対して、IP-MRM法を用いたCEAの測定が可能なことを確認した。また、IP-MRM法で測定したCEAの絶対量とAIAで測定したCEAの絶対量は近い値を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標はCEAに対するIP-MRM解析の条件検討を行うことであった。CEAペプチドのチャネルの作成を行い、イオン強度が非常に高いチャネルを見つけ出すことに成功し、測定可能なN型糖鎖ペプチドのチャネルも同時に設定することが出来た。また、CEA高値の大腸癌患者血清からもIP-MRM法を、用いたCEAの定量測定が可能なことを確認した。初年度として次につながる十分な結果を得ることができたので、おおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は各種疾患患者血清に対してCEAのIP-MRM測定を行う。患者血清は、癌患者血清(大腸癌、膵癌、胃癌、肺癌、乳癌、卵巣癌)、良性疾患患者血清(糖尿病、慢性肝炎)と健常者血清を用いる。本解析を行うことで疾患を判別できるマーカーペプチドおよび高い臓器特異性を示すマーカーペプチドを同定とする。見つかったマーカー候補ペプチドに対して、さらに多くの患者血清に対して同様の実験を行い、再現性を確認することで、診断精度を向上させる疾患特異的なCEAマーカーペプチドの有用性を評価する。また、他の腫瘍マーカー(CA125、PSA)に本解析法が応用可能か検討する。
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Causes of Carryover |
本研究は質量分析装置を用いた実験を行う。そのためLCカラムなどの消耗品を購入する必要があったが、予想していた以上に測定が順調に行えたため消耗品の購入を見送った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究は平成28年度に各種疾患患者血清を大量に購入する予定である。当初予定していたよりも多くの血清を購入する必要があると思われたため、その購入資金に当てる予定である。
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