2015 Fiscal Year Research-status Report
エンハンサーの標的決定を超えて:クロマチン基本高次構造の機能的多様性を探る
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15K18454
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
辻村 太郎 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90741893)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 片アリル欠失ES細胞 / ゲノム編集 / 腎系統分化誘導 / エンハンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、Tfap2c-Bmp7遺伝子座のエンハンサーの網羅的な探索とその振る舞いを解析することを目的としている。そのためにin vitroおよびin vivoでの解析系を構築し、解析を進めてきた。 まず、in vitroにおいては、当該遺伝子座を含む1.25Mbを片アリルについて欠失したES細胞株を樹立し、残る片アリルの変異導入のみで簡便にゲノム領域の機能解析を行える解析系を構築した。実際にこれまでに遺伝子座周辺に10個の網羅的な欠失を導入することができた。さらに、これらの一部について、腎臓系統への分化誘導法を適用し、一つの領域についてエンハンサー活性の存在を示す結果を得ることができた。これらの成果はすでに関連学会等で発表している。 次に、in vivoにおいてはこれまでに樹立した遺伝子座周辺の大規模欠失体および逆位体マウスの解析を行ってきた。特にBmp7が腎臓発生に必須の役割を担うことから、これら変異体マウスにおける腎臓機能の解析を進めてきた。腎臓発生や腎機能マーカーに顕著な変異を認めず、これら欠失体、逆位体に含まれるBmp7下流域がBmp7の腎臓発生機能において重要ではないことを明らかにすることができた。この成果は日本腎臓学会およびアメリカ腎臓学会等で発表してきた。 一方で、上記変異体マウスにおいてある組織で興味深い表現型を認めており、その解析を現在進めている。今後その原因ゲノム領域を同定していくことを検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最近のゲノム編集技術の発展に伴い、研究戦略を若干変更したため。 まず、in vitro系では計画通りに、対象遺伝子座であるTfap2c-Bmp7を含む1.25Mbの片アリル欠失ES細胞株を作成した。その後、CRISPR/Cas9技術で網羅的なゲノム領域の欠失を導入した。これらについて様々な細胞系統への分化誘導を施し、組織特異的エンハンサーのスクリーニングを行うことにした。これによりin vitroでの簡便なアッセイ系の構築と、in vivoでのエンハンサー活性テストのための土台とすることにした。これまでに腎臓系統特異的分化誘導を実際に行い、野生型ではBmp7発現が上昇すること、ひとつの欠失体ではその発現が減弱することを見出した。しかし、本課題の目的の達成には、他の分化誘導系を適用しさらなるエンハンサー活性の検出を必要としている。 また、同様にゲノム編集技術の発展を受けて、組織特異的エンハンサーのin vivoでの解析ももっぱらCRISPRによる欠失に依存することにした。発現パターン解析を簡便にするために、Tfap2c, Bmp7のlacZレポーター遺伝子のノックインまたは遺伝子トラップラインに変異を導入することにした。現在これらマウスを導入中であり、それを待っての解析となる。 以上、一部研究計画に変更があったため、特にin vivoでの解析に遅れが出ている。しかし、今後はこれら変更が功を奏して効率よく解析を進められると考えている。 一方でin vivoで、これまでに樹立した遺伝子座周辺の欠失体と逆位体について表現系解析および遺伝子発現解析を進めてきた。一つの変異体で、ある組織に予想外の表現型を認めることができた。まだその解析を現在進めている段階だが、これはエンハンサー等の機能の変異によるものと考えられるので、その原因を探ることで周辺遺伝子の新たな機能解明につながると考えている。この予想外の展開は期待を上回るものとも言える。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、in vitroでの片アリル欠失細胞株の樹立と網羅的変異導入を達成できたので、今後はこれらを利用した詳細な解析を進めていく。 次に、in vivoでは、lacZレポーターマウスの導入後、CRISPRによるゲノム編集を行い、エンハンサー候補領域の機能解析を行う。さらに、これまでに作成した変異体で見られた表現型およびその原因探索を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
本研究課題ではマウスの導入・新たな系統作成・維持に費用がかかる。予算枠に合わせて一部研究計画を変更し、プロジェクトを進行している。その他学会発表のための旅費および物品費に経費は使われた。これらの結果次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
マウス系統の維持費がかさむことが予想されるので主にこれに使用する予定である。
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Research Products
(8 results)