2015 Fiscal Year Research-status Report
ヒト唾液細菌叢に内在し、腸内炎症に関わる細菌の同定とその機能の解明
Project/Area Number |
15K18461
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
須田 亙 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20590847)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ヒト常在細菌叢 / 炎症性腸疾患 / 唾液細菌叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ヒト唾液細菌叢に内在し、腸内炎症に関わる細菌の探索・同定とその機能の解明を目的とする。具体的には、IBD患者および健常者の唾液細菌叢を無菌マウスに投与したノトバイオートマウスである「ヒト唾液マウス」を作成し、その腸内細菌叢の解析から、 唾液細菌叢に内在し腸内に定着可能な細菌群を特定する。また、各ヒト唾液マウスの大腸粘膜固有層における炎症性T細胞の集積量を解析することで、炎症に関与する細菌種(群)を同定する。さらに、同定された炎症関連細菌のゲノム解析を行うことによって、その機能的特徴を明らかにする。
H27年度は、健常者およびIBD患者の唾液細菌叢を移植した「ヒト唾液マウス」の作成を試み、これに成功した。その後、各ノトバイオートマウスの糞便を回収し細菌叢DNAを調整した後、NGSを用いたメタ16Sシークエンシング(ゲノム支援による)を行うことで、各検体につき10,000リード以上の16S配列データを得ることができた。得られた配列データの情報学的解析(Operational Taxonomic Unit:OTU解析、データベース照会による菌種帰属)を実施することで腸内細菌叢の菌組成を明らかにすることができた。以上を実施することでヒト唾液細菌叢に内在し腸内に定着可能な細菌群を把握することができたと考えている。一方で、各ノトバイオートの大腸粘膜固有層における炎症性T細胞の集積量の評価も行った。得られた菌組成との相関関係を解析することで、腸内に定着し炎症に関与するcandidateを選抜するにいたった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載のH27年度の研究計画(下記)は全て実施済みである。このことから進捗状況は順調であると判断できる。 ・ マウスに投与する唾液菌叢のメタ16S解析 ・ ヒト唾液マウスの作成 ・ ヒト唾液マウスの糞便細菌叢のメタ16S解析 ・ ヒト唾液マウスの腸内上皮細胞における炎症性T細胞の蓄積量の解析
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度は、前述のH27年度の研究から選抜したCandidateを単独あるいは複合で無菌マウスに投与したノトバイオートマウスを作成し、炎症誘発能の再現性を評価する。再現性が確認されたCandidateに関して、ゲノム配列の取得を進める。得られたゲノム情報の情報学的処理に関しては、複数の実績がある解析パイプラインを有しておりこれを導入することによって、スムーズに解析を実行可能であると考えられる。得られたゲノムデータをデータベースとした、ヒト腸内細菌叢メタゲノムデータ(各国の既存報告)のマッピング解析することで、実際のIBD患者の腸内細菌叢中で本研究で見出したCandidateが増加しているかどうかを確認する。
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Causes of Carryover |
H27年度に計画していた、NGSによるメタ16Sシークエンシングを新学術ゲノム支援によって行うことができたため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年はゲノム支援によって研究計画段階よりも多検体のノトバイオートマウスの解析が可能であったため、想定よりも多くの腸内炎症に関わるcanditade菌種を見出した。このことから、次年度使用額はゲノムH28年度のゲノム解析に充填し、各canditade菌種ゲノムの高精細な解析を実施する。
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