2015 Fiscal Year Research-status Report
高変異型RNAウイルスのゲノム変異に影響されない治療標的探索システムの構築
Project/Area Number |
15K18463
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Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
阿部 雄一 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, プロテオームリサーチプロジェクト, 研究員 (30731632)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | RNAウイルス / リン酸化プロテオミクス / Kinome / チロシンリン酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では、HCV をモデルウイルスとして、高変異型 RNAウイルスのゲノム変異に影響を受けない治療標的探索のための研究システム構築を目的とする。HCV タンパク質リン酸化プロテオミクス解析から、Kinaseを中心とした新規 HCV 治療標的の探索ならびに他の高変異型 RNA ウイルス治療法構築への貢献が期待される。 平成27年度においては、より大規模なリン酸化プロテオミクス情報を取得するための条件検討を進めた。特にチロシンリン酸化は重要な生理的意義を持つことが知られているにもかかわらず、セリンリン酸化、スレオニンリン酸化も含んだ全リン酸化修飾に対して存在量がわずか1%と少なく網羅的検出が困難であった。そのため本年度は、チロシンリン酸化の濃縮の検討を進めた。 過去、チロシンリン酸化特異的抗体による免疫沈降法がチロシンリン酸化濃縮として使用されてきた。我々は免疫沈降ビーズからの溶出液、夾雑抗体の除去法、質量分析計パラメーターの最適化を行った。その結果既存法の2.3倍以上の効率でチロシンリン酸化濃縮に成功した。また改良型濃縮法で得られたチロシンリン酸化はその30%以上がこれまで未報告のものであり、既存法では解析し得なかったチロシンリン酸化シグナルを解析可能である事が明らかとなった。 また解析サンプルとして現在異なる遺伝子型のHCVゲノム複製細胞を複数構築している。HCVゲノム複製細胞の構築が完了次第、大規模リン酸化プロテオミクスを開始する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定に含まれていなかったチロシンリン酸化プロテオミクス解析も遂行するため、チロシンリン酸化特異的抗体によるチロシンリン酸化濃縮を試みた。しかしながら、夾雑抗体の影響により十分な再現性が得られず濃縮法の再検討が必要となった。我々はチロシンリン酸化濃縮プロトコル全般に渡る徹底的な最適化を試みた結果、予想以上の大規模チロシンリン酸化プロテオミクス解析系の構築を達成することができた。 またリン酸化プロテオミクスの考察に必要なインフォマティクス技術の導入も達成した。そのため当初の標的であるHCVタンパク質上でのリン酸化修飾に加え、宿主キナーゼ活性変動の推定も可能となり、全ゲノム的なKinome解析も研究期間内に同時に遂行できると考えている。 以上の理由から、平成27年度は当初の計画以上に研究が進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
HCVゲノム複製細胞の構築完了後、すみやかに大規模リン酸化プロテオミクスを行う。また同時に得られるタンパク質サンプルも解析することで、HCVタンパク質も含めてタンパク質発現プロテオミクスも行う予定である。これら重層的なプロテオミクスデータから、大きな変動を示すウイルスリン酸化修飾ならびにその責任キナーゼを抽出する。抽出したリン酸化修飾部位ならびに責任キナーゼの分子生物学的解析を行い、それらの生理的意義ならびに治療標的としての評価を行う。
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Causes of Carryover |
当初27年度に行う予定であった大規模リン酸化プロテオミクス解析を平成28年度に変更したため、その物品費が次年度使用額として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
大規模リン酸化プロテオミクスに必要な物品費として利用する。
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