2016 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子核内配置-転写同時ライブイメージングを利用した多能性幹細胞不均一性の解明
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15K18467
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
落合 博 広島大学, 理学研究科, 特任講師 (60640753)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | クロマチン動態 / 転写 / ライブイメージング / 染色体 / ゲノムDNA / 遺伝子発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞核内では各染色体が完全に混ざり合うこと無く個々の領域を保ち、DNA や核内タンパク質 から成る核内構造体が不均一に分布している。また、特定の遺伝子の発現には、プロモーターと遠方の転写調節領域の相互作用が影響することが知られている。しかし、染色体や核内構造体の空間配置は細胞分裂ごとにランダムに決まり、また間期において動的に揺らいでおり、細胞間で遺伝子発現制御能の多様性を生む要因となり得るが、技術的困難が多く、詳細は不明である。本研究では、1) 内在遺伝子の転写と核内配置の同時可視化システムを確立し、2) 本システムを利用してマウス胚性幹細胞における遺伝子発現量の不均一性の発生メカニズムの解明をめざす。昨年度までに1)のシステム、Real-time Observation of Localization and EXpression (ROLEX)システムを確立し、それを利用した解析からNanog遺伝子の確率的な転写活性化には、Nanog遺伝子と複数の遠方ゲノム領域との不安定な相互作用が関係していることが示唆された (Ochiai et al., Nucleic Acids Research, 2015)。また、これらNanogと相互作用する領域にはNanogの上流因子であるSox2結合領域が極端に濃縮されていることがわかった。Sox2はマウスES細胞内で結合サイトが空間的に密集したSox2クラスターを形成することが報告されている。今後、これらSox2クラスターの一つにNanog遺伝子及びその制御領域の相互作用部位が含まれているかを検証する。一方で、Nanog遺伝子だけでなく、マウスES細胞で発現する種々の遺伝子にも解析を行うために、多数のROLEXシステムに対応したノックイン細胞の樹立を進めている。今後これらの細胞株に関して解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに内在遺伝子の転写と核内配置の同時可視化システムを確立し、それを利用した解析からNanog遺伝子の確率的な転写活性化には、Nanog遺伝子と複数の遠方ゲノム領域との不安定な相互作用が関係していることを示唆する結果を得た (Ochiai et al., NAR, 2015)。今年度はさらに、これらNanog遺伝子と相互作用する領域に、Nanogの上流転写因子であるSox2の結合サイトが多く含まれていることを見出した。当初想定した内容以上の発見があったことから、計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
Nanogと相互作用するゲノム領域中のSox結合サイトがNanogの発現に重要であるかどうかを調べるために、これら領域にdCas9を結合させ、Nanog遺伝子の発現にどのような影響が見られるのか調べる。
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Research Products
(4 results)