2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K18470
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
末次 健司 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (70748839)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 菌従属栄養植物 / 菌寄生植物 / 菌根共生 / 種子散布共生 / 送粉共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の最終的な目標は、独立栄養を営むはずの植物の中で、菌類や他の植物に寄生して養分を得るようになった従属栄養植物が、どのような適応を遂げ、進化してきたかのを明らかにすることである。これまで従属栄養植物は、開花、結実期以外は地上に姿を現さないため、分布情報すら明らかになっていない種れた。が多く、詳細な生態学的研究は困難が伴うと思われてきた。そこで私は、まず従属栄養植物の精力的なフィールドでの探索と記載分類を並行して行うことにより、生態学的な研究を可能にしてきた。植物相の研究の進んだ日本では、花を咲かせる植物の日本初記録や新種が報告されることは極めて稀であるが、私は今年度もこのような植物を2種報告し、その成果は多くのマスメディアで取り上げられた。 また菌従属栄養植物に関する従来の研究の中心は宿主の同定をすることであったが、さらに私は、菌従属栄養植物の適応や進化を明らかにすべく、多角的なアプローチを用いて研究を展開した。例えば、菌従属栄養植物は地中の菌に養分を全面的に依存していることから、その生育場所は菌糸が豊富に存在する暗い林床であることが多い。こうした環境は風通しが悪く障害物も多いため、風散布には適していない。このため、光合成をやめたラン科植物の中には、極端な暗所に進出することで、動物に種子を運んでもらうよう進化したものも存在することが明らかになった。この発見は、世界でも初めてのラン科植物における動物による種子散布の報告である。これまでラン科植物の多様性はその鮮やかな花形態から花粉を運ぶ昆虫との関係性に注目が集まっていた。そのため本研究は、ラン科に多様性をもたらす牽引力が、花粉を媒介するとの関係だけではないということを提示した点からも、重要な研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記の成果は、当該年中も複数の国際学術論文誌で受理、出版されており、期待以上の研究の進展があったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、野外観察、室内実験を行い、論文を執筆する。
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Causes of Carryover |
本科研費申請中に白眉センターの特定助教に採用されたため、職務として当該研究にあたることができたため、予算に余裕が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の野外調査を予定より多く行う等の使用計画の変更を行う。
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Research Products
(7 results)