2015 Fiscal Year Research-status Report
集団遺伝学的手法による絶滅危惧種ノグチゲラ個体群の健全性評価と動態プロセスの推定
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15K18473
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
森 さやか 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (70623867)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 保全遺伝学 / 景観遺伝学 / マイクロサテライト / 絶滅危惧種 / 島嶼個体群 |
Outline of Annual Research Achievements |
次世代シークエンサーを用いて,ノグチゲラ (Sapheopipo noguchii) のマイクロサテライト座位を探索し,146座位のマイクロサテライトDNA領域にプライマー候補配列を設計した.それらのプライマー候補を組み合わせ,ユニバーサル蛍光プライマーを利用したマルチプレックスPCR反応系を構築した. 設計に当たっては,まず2個体のDNAサンプルを用い,24ペアのプライマー候補によって,蛍光標識なしのシングルPCRとユニバーサル蛍光プライマーを用いたシングルPCRの増幅試験を行った.次に,それらの試験に合格したプライマーを組み合わせ,7座位と6座位のマイクロサテライトDNA領域を一度に解析可能なマルチプレックスPCR反応系を2組(noguchi1,2)構築した.最後に,それらのマルチプレックスPCR反応系で,生息域全域を網羅するように選んだ48個体の多型解析を行った.反応系noguchi 1では,7座位全てに多型が検出され,noguchi 2では5座位に多型が検出された.いくつかの遺伝子座ではハーディー・ワインベルグ平衡からの逸脱やヌルアリルの存在が疑われ,いくつかの遺伝子座間の連鎖が検出された. 今回のマーカーの質の評価結果は,解析結果が不明瞭な2個体のサンプルの影響を受けている可能性があるほか,分布域内の分集団構造の影響を受けている可能性も考えられる.今回試験したマーカーが,今後の集団遺伝学的解析に使用可能であるかどうかは,再実験も含め,さらなる解析によって慎重に検討する必要がある.また,多型の程度が低い遺伝子座が多かったため,試験座位を増やすことによって,集団遺伝学的解析に活用できるマーカーを多数探索する必要性が再確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定通り,次世代シークエンサーによるマイクロサテライト座位の探索,プライマー候補配列の設計に加え,2組のマルチプレックスPCR系を構築できた.1組あたりに組み込めたマーカー数は予想よりも悪かったが,2組構築することにより,目標マーカー数を達成した.ただし,集団遺伝学的解析に適したマーカーであるかどうかは,追加の解析によって,さらに慎重に判断する必要がある. GIS解析に必要なデータベースの開発状況については,関係者との情報交換が進んでいないが,全体としては,おおむね順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,マルチプレックスPCR系の開発を実施し,集団遺伝学的解析に活用できるマーカー数を増やす.開発したマーカーを用いた多型解析も少しずつ進め,マーカーの質の評価をするとともに,集団の遺伝的構造についても明らかにしていく. 既存の生態のデータ,GISデータについては,それらを蓄積,取りまとめ中の関係者との情報交換に務める.
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Causes of Carryover |
マーカー開発実験が効率的に実施できたた事と,開発したマーカーの質の確認実験が一部十分にできなかったことから,実験用消耗品にかかった物品費が当初計画よりも少なくなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
申請後に代表者が異動したことから,実験補助に頼る割合が多くなっており,来年度も人件費は計画よりも多くなる見込みである.物品費については,今年度より増える見込みであり,これらを繰越額で充当したい.
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