2017 Fiscal Year Research-status Report
集団遺伝学的手法による絶滅危惧種ノグチゲラ個体群の健全性評価と動態プロセスの推定
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15K18473
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
森 さやか 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (70623867)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 保全遺伝学 / 絶滅危惧種 / 景観遺伝学 / マイクロサテライト / 次世代シーケンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年までに開発したマイクロサテライトマーカー16座位を用いて,1998年~2013年に生息域全域で採集された322個体(成鳥208,幼鳥105,齢不明9)を解析した.解析は,全個体と幼鳥除外の2つのデータセットに分けておこなった.ジェノタイピングとアリル頻度解析の結果を踏まえ,遺伝的集団構造解析は,10または8座位でおこなった.距離による隔離の解析では,両データセットとも,どの距離でも血縁度は0付近だった.サンプリング集団間と個体間の遺伝的距離のPCoA分析でも,両データセットとも明瞭なクラスターを見いだせなかった.遺伝的祖先集団の解析では,すべての個体が単一の祖先集団に帰属すると推定された.景観遺伝学的解析では,幼鳥除外のデータセットの場合のみ,与那覇岳付近を境に南北に異なる2つの集団が推定された.いくつかの仮定の下で行った血縁解析による出生分散パターンの推定では,幼鳥の分散は生息域全域で距離や方向に特異性なく生じていることが示唆された. 本種の個体群内の遺伝的分化の程度は低く,保全単位の考慮の必要性は低いと考えられるが,PCoA解析の結果は,複雑な遺伝的構造が存在する可能性を示唆した.南北で見られた分集団構造については,生息環境の減少等による分布の縮小で,一時は本種が生息していなかったやんばる南部に,北部から分散した個体が再定着した創始者効果の結果と考えられる.この地域は,フイリマングースの徹底的防除に伴うヤンバルクイナの分布回復が報告されている地域とも重なる.ノグチゲラの最近の南部集団の個体数の維持や増加も,マングースの防除によって促進されている可能性がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
開発したマイクロサテライトマーカーの多型解析は進めているが,検出された遺伝的集団構造が弱いため,サンプリング地点の位置関係以外の景観要因との関連については検討できる段階にない.過去の個体群動態の推定については,まだ解析できていない.
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Strategy for Future Research Activity |
まだ活用できていない開発済みマーカーを用い,より高精度の遺伝的集団構造解析を行い,これまでの解析で示唆された,より複雑な遺伝的集団構造とその成因について検討する.
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Causes of Carryover |
DNA実験と解析がやや遅れているため,次年度分に実験費用を繰り越した.また,次年度には,バンクーバーで開催される国際鳥学会議で成果発表をすることにしたため,繰越金には参加経費も見込んででいる.
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Research Products
(3 results)