2015 Fiscal Year Research-status Report
配偶核にて発見した新奇な「ゲノムの切断と修復」の機構と機能の解明
Project/Area Number |
15K18475
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福田 康弘 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50527794)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | DSB / クロマチンリモデリング / 配偶核 / テトラヒメナ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成 27 年度は,減数分裂後の半数体核(配偶核)に起こる DSB 形成と修復に関わる遺伝子の同定,および機能解析を進めた.また DSB と関連したヒストンのエピジェネティック修飾を探索した. DSB 形成と修復は,配偶核のクロマチンリモデリングを導く.これに関わる遺伝子の解析においては,減数分裂から配偶核の成熟に至る過程で,TopoisomeraseIIB および DnaPK が半数体核に局在することを確認した.とくに興味深いことに,減数分裂後の半数体核に対する DSB の導入と修復において DnaPK が特徴的な消長を示すことを明らかにした. 高等動物の精子形成や藻類の運動性配偶子形成における半数体の DSB の導入と修復では,それに先だちヒストン H4 N 末端のアセチル化が起きる.この配偶核におけるヒストン H4 N 末端リジン残基アセチル化は,配偶子成熟に不可欠なクロマチンリモデリングの第一ステップだと言われている.そこでテトラヒメナの配偶核形成における,ヒストン H4 N 末端のアセチル化を検証したところ,本研究で注目している新規の DSB 形成に先立ち,N 末端にある 3 つのリジン残基がアセチル化されることが明らかになった.つまり配偶核(子)成熟の初期にあるヒストンアセチル化は,進化的に保存された現象であった.配偶核(子)成熟の初期にあるヒストンアセチルの知見を深めることは,続く DSB 形成と修復の解析にも深く関わることが予想される.そこでヒストンアセチル化酵素にも注目して解析を深めることとした.すでにテトラヒメナのゲノムデータベースから 4 つの KAT 候補遺伝子を同定し,それぞれの EGFP-Tag 融合発現株を作成して局在の解析を進めている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TopoisomeraseIIB および DnaPK の局在,また欠損株表現型を解析から,これら 2 遺伝子が配偶核の DSB 形成と修復に関わる確証を得た.さらに DSB 形成を導く複数の候補遺伝子を新たに見出しており,その局在や欠損株表現型の解析も進めている.当初は,TopoisomeraseIIB および DnaPK 欠損株と野生株の比較 RNA-Seq から DSB 形成と修復に関連して機能する遺伝子を同定することを計画した.しかし発現プロファイルなどを参考にすることで複数の候補遺伝子を新たに捕らえることに成功したため,比較 RNA-Seq は延期した.したがって,DSB 形成と修復に関わる候補遺伝子の同定について,より省力的かつ要点的に進んでいる. また高等動物の精子形成や藻類の運動性配偶子形成で見られる減数分裂後のヒストン H4 N 末端アセチル化が,テトラヒメナの配偶核形成においても DSB 形成に先だって起こることを見出した.これは,配偶核(子)成熟の初期にあるヒストンアセチル化が進化的に保存された現象であることを示す重要な発見である.この進化的に保存されたヒストン H4 N 末端のアセチル化の役割も本研究課題に加えることとした.すでにヒストンアセチル化酵素(KAT)の候補遺伝子を同定しており,それらの局在解析に着手している. これらの達成点から,本研究は進行はおおむね順調であると評価した.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成 28 年度は,引き続き減数分裂後の半数体核(配偶核)に起こる DSB 形成と修復に関わる新たな遺伝子の同定を進める.これは,公開されている遺伝子の発現プロファイルを参考にして候補遺伝子を選定し,遺伝子産物の局在と欠損株の表現型から評価する.また既に DSB 形成と修復に関わることを捕らえている遺伝子について,HA や FZZ のタグ融合株による IP から,本現象と共役する遺伝子を同定する.また DSB で切断されているゲノムサイズの解析も共同研究者らによって進められており,その進行をサポートする. 精子形成と同様に,DSB 形成と修復に先立ってヒストン H4 N 末端アセチル化が配偶核で起きることが明らかとなった.このことから,精子や運動性配偶子の形成においては,減数分裂後の半数体核では「ヒストン H4 アセチル化・DSB 導入・DSB 修復」の一連からなるメカニズムが進化的に幅広く保存されていることが示唆された.ヒストン H4 アセチル化の不全は,精子の不稔の原因となることが明らかになっており,その責任遺伝子となるヒストンアセチル化酵素(KAT)も同定されている.しかしヒストン H4 アセチル化が精子形成に担う意義の解析は進んでいない.テトラヒメナの DSB 形成と修復においてもヒストン H4 N 末端アセチル化が重要であることが予想されるため,この現象も本研究の課題に加えて解析を進める.すでにテトラヒメナのゲノムデータベースから同定した 4 つの KAT 候補遺伝子について,局在の解析,欠損株の作成と表現型の解析を行う.
|