2015 Fiscal Year Research-status Report
マイクロRNAによる複雑な転写後抑制様式の理解に向けたin vivo解析
Project/Area Number |
15K18476
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三嶋 雄一郎 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (00557069)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 発生 / マイクロRNA / ゼブラフィッシュ |
Outline of Annual Research Achievements |
miRNA経路の中核因子TNRC6AおよびTNRC6Bの変異体(MZtnrc6変異体)を用い、miRNAによる転写後抑制におけるTNRC6の機能解析を行った。miRNAにより抑制されるルシフェラーゼレポーターmRNAをMZtnrc6a受精卵にインジェクションし、6時間後にその抑制活性を検証したところ、野生型で見られたmiR-1によるレポータの抑制が、MZtnrc6a変異胚では効率よく起こっていないことを確認した。さらにポリ(A)鎖の短縮化が起こらないレポーターmRNAを用いて同様の実験を行ったところ、このレポーターにおいてもMZtnrc6a変異胚ではmiR-1による抑制が効率よく起こっていなかった。MZtnrc6a変異胚ではmiRNA経路に関わる主要な因子のタンパク質量が低下していなかったことから、変異胚における抑制活性の減少は他のタンパク質因子の発現不全による二次的影響である可能性は考えにくい。以上の結果から、TNRC6AがポリA鎖の短縮を介した標的mRNAの分解以外に、翻訳レベルでの抑制に関与していることが強く示唆された。また、miR-430による抑制を検出するGFPレポーターを発現する系統と変異系統の掛け合わせを行い、tnrc6a/tnrc6b二重変異体のバックグラウンドにGFPレポーター遺伝子を持つ系統を作出した。この系統は次年度以降の解析に用いる予定である。ユビキチン系を利用したタンパク質ノックダウン法については、cnot1のN末端にCRISPRシステムによりGFPを挿入するための準備を行い、活性の高いgRNAを選別した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、予定していたレポーターmRNAを用いた実験をMZtnrc6a胚を用いて行い、TNRC6Aの必要性を検証することができた。この結果は本研究の基盤となる部分であり、重要な成果であると考える。一方で、MZtnrc6a/tnrc6b二重変異体に関しては、成体の生存率が予想以上に低く、また加齢に伴い稔性の低下が起こったため、十分な検証をするための胚を得ることができなかった。この点に関しては次年度以降の課題である。MZtnrc6a/tnrc6b二重変異体へのGFPレポータの導入は完了していることから、次年度以降はこの系統を中心に研究を推進することができると期待できる。CRSIPRシステムの確立や標的部位の選別等は予定通り進行している。 想定外の成果として、miRNA経路の解析を進める中で、miRNA以外にmRNAの安定性を制御する要因として、コドン使用の隔たりが大きな影響を及ぼすことを発見した。副次的な成果ではあるが、初期発生におけるmRNA制御を理解する上で重要な成果であり、今後本計画を進める上でも必須の知見であることから、予定の一部を変更して研究を進めた。この内容についてはMolecular Cell誌に論文として報告した。 当初は予期していなかった結果が含まれているものの、全体として計画は順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在MZtnrc6a/tnrc6b二重変異体を繁殖させており、次年度以降の実験に十分な個体数を確保できるように努める。稚魚期における高い致死率が問題となっている可能性が考えられるので、受精卵への野生型tnrc6a mRNAのインジェクションによって、初期発生の間のみ一時的にtnrc6の機能を回復させ、稚魚期における致死率を下げて系統を維持することを計画している。 平行して、ユビキチン系を利用したタンパク質ノックダウン法について実際の実験に使用できるよう最適化を図る。内在遺伝子にゲノム編集によりGFPタグを導入し、GFP nanobodyによって分解を誘導する以外にも、既知のタンパク質とE3ライゲースとの融合タンパク質を過剰発現させることにより、より簡便にタンパク質分解の誘導を行うことが理論上は可能である。これについては予備的ながら成果が出始めており、こちらの利用も視野に入れて研究を進める。 新たに発見したコドンによるmRNA安定性制御機構とmiRNA/TNRC6による転写後抑制機構は、共にCCR4-NOT複合体を使用する点において共通しているため、今後も協調的に研究を進めることが重要であると考える。
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Research Products
(6 results)