2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K18492
|
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
谷山 怜子 (村上怜子) 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), その他 (00444365)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 生物時計 / 藍色細菌 / 概日リズム / X線結晶構造解析 / 超分子質量分析 / 溶液散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
藍色細菌の時計タンパク質は、KaiA、KaiBおよびKaiCから構成され、3つのタンパク質によって時間振動が生み出される。KaiAおよびKaiBはKaiCと相互作用うる。これに加え、時計関連タンパク質SasAもまた、KaiCと相互作用する。KaiBとSasAはKaiCに対して競合することが分かっており、KaiA、KaiBおよびSasAは、KaiCに対し独立して相互作用するのではなく、相互に影響しあっていると考えられる。 本研究では、KaiB-KaiC複合体、KaiA-KaiC複合体およびSasA-KaiC複合体の構造解析を行い、それぞれのタンパク質の相互作用部位はどこで有るのか、また、個々のタンパク質の相互作用にともなってどのようなKaiCの構造変化が起こるかを明らかにする。これによって、KaiCを含めた4つのタンパク質の複合体の形成が、時間振動中にどのように変化していくかを解明する。 平成27年度の研究において、KaiB-KaiC複合体、SasA-KaiC複合体および、単独での構造が未解明であるSasAの結晶作製を試みた。現在、SasAの結晶が得られており、構造解析を進めている。 また、SasAおよびSasA-KaiC複合体を、タンパク質複合体の正確な分子量を見積もることができる超分子質量分析法により解析した。これまでSasAは、ゲルろ過クロマトグラフィー法による解析から3量体と考えられていたが、超分子質量分析法により2量体であることが明かとなった。一方、SasA-KaiC複合体の解析から、SasAはKaiC6量体に対し2-6分子と複数分子が結合することを明らかにした。今後、これらの知見を踏まえて、Kaiタンパク質複合体を対象とした構造解析を行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
構造が未解明であった、SasAの結晶作製に成功した。この結晶から、2.6 Åの分解能のデータが得られた。SasAはヒスチジンキナーゼに分類されるため、既知のヒスチジンキナーゼのデータをもとに、分子置換法による構造解明を試みたが、分子置換法では構造は得られなかった。これは、既知のヒスチジンキナーゼとSasAの構造が異なるためと考えられ、現在、セレノメチオニンを導入したSasAの結晶作製を試みている。 平成27年度の研究として計画していた、KaiB-KaiC複合体の結晶構造解析のために、現在、結晶候補が得られており、現在2次スクリーニングを進めている。SasA-KaiC複合体のX線結晶構造解析のために、様々なSasA変異体(SasAの擬似リン酸化変異体、擬似脱リン酸化型変異体、SasAのKaiC相互作用ドメイン変異体)を発現するコンストラクトを作製した。現在、様々な組み合わせでの結晶化を試みている。 SasA-KaiC複合体の溶液散乱法による解析に先立って、表面プラズモン共鳴(SPR)によるKaiCおよびSasAのリン酸化状態の変化にともなう結合親和性への影響の解析、超分子質量分析法による化学量論の決定を進めている。 Kaiタンパク質複合体の結晶は得られていないが、SasA単独の結晶が得られたこと、また、結晶構造解析以外の解析が進んでいることから、概ね順調に進行していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、SasAの構造解析を継続して進め、構造が明らかになった場合はその構造をもとに、SasAの機能の考察を行う。 また、KaiB-KaiC複合体、SasA-KaiC複合体の構造解析の研究を引き続き進める。表面プラズモン共鳴(SPR)によるKaiCおよびSasAのリン酸化状態の変化にともなう結合親和性への影響の解析や超分子質量分析法による化学量論の知見をもとに、各タンパク質の適した組み合わせを決定し、構造解析を進める。さらには、KaiB-KaiC複合体に対するKaiAの結合の影響を解析することも計画している。 こうしたKaiタンパク質の相互作用の解析を通じて、本研究では、時計タンパク質の概日リズム発動の分子機構の解明を目指す。
|
Causes of Carryover |
共同研究者が名古屋市立大学に別件で来た際に研究打ち合わせを行ったため、共同研究者(岡崎および京都)との研究打ち合わせのための計上した「旅費」が、研究計画より低かった。また、研究成果を発表するための費用(論文の校閲費、投稿料、別刷り費)を「その他」に計上していたが、研究の進行がやや遅れたため、論文投稿まで至らなかった。以上の理由により、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、平成28年度において、研究成果を発表するため費用、学会参加のための旅費、研究成果を発表するための費用(論文の校閲費、投稿料、別刷り費)に用いる。
|