2015 Fiscal Year Research-status Report
ゴルジ体における輸送小胞形成とそれに基づく細胞機能制御
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15K18507
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
若菜 裕一 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (90635187)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | オルガネラ膜接触 / 小胞体 / ゴルジ体 / 輸送小胞 / 細胞分裂 |
Outline of Annual Research Achievements |
小胞体-ゴルジ体接触部位では、小胞体膜タンパク質VAPが脂質輸送タンパク質CERTとOSBPとの結合を介して、それぞれセラミドとコレステロールをゴルジ体へ輸送すると考えられる。私たちは、このVAPを介する脂質輸送がトランスゴルジ網(TGN)からの輸送小胞(CARTS)の形成に必要であることを報告した。また、ゴルジ体と膜接触部位を形成する小胞体膜サブドメインの主要な構成因子として、脂質ホスファターゼSac1を見出し、このタンパク質がVAP-OSBPと複合体を形成することを明らかにした。今回私たちは、(1)小胞体-ゴルジ体接触部位の新規構成因子の探索を目的として、FLAG-Sac1結合タンパク質のプロテオーム解析を行なった。その結果、既知の結合タンパク質と共に、興味深いタンパク質を多数見つけることができた。現在私たちは、Sac1との機能的連携が推測されるいくつかのタンパク質について、機能と局在の解析を行なっている。また、これと並行して候補タンパク質を絞り込むための二次スクリーニングの準備を進めている。(2)小胞体-ゴルジ体接触がCa2+輸送に関与する可能性を調べるため、VAPやCERT、OSBPの発現抑制がCab45(Ca2+濃度依存的にゴルジ体に留まり積み荷選別に働くタンパク質)の局在に与える影響を調べた。その結果、これら条件においてCab45がゴルジ体から消失していることがわかり、ゴルジ体内腔のCa2+濃度が低下している可能性が示唆された。また、(3)細胞分裂期CARTS(midbodyに集積することがわかっている)の解析を行なった。その結果、間期と同様にCARTSはEg5陽性微小管上に存在することがわかった。ライブセルイメージングによりCARTSがmidbodyに集積する様子を可視化することには成功したが、微小管に沿った移動の様子は可視化できていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)小胞体-ゴルジ体接触部位の新規構成因子の探索:FLAG-Sac1結合タンパク質を同定するため、免疫沈降実験行なった。既知の結合タンパク質に加えて興味深いタンパク質を多数見出すことができたが、本研究の目的である小胞体-ゴルジ体接触部位だけでなく、他の膜接触部位でSac1と結合するタンパク質も多く含まれているように思われた。機能・局在解析へと進める候補タンパク質を絞り込むため、二次スクリーニングを行なう必要性があると考えている。その具体的方法は「今後の研究の推進方策 等」欄に記載する。Sac1との機能的連携が推測されるいくつかのタンパク質については、すでに機能・局在解析を始めている。(2)小胞体-ゴルジ体接触がCa2+輸送に関与する可能性:VAPの発現抑制によって、約3割の細胞でCab45がゴルジ体から消失することがわかった。興味深いことに、コレステロール合成・輸送を阻害する25-ヒドロキシコレステロール存在下では、このフェノタイプを示す細胞の数が6割近くまで上昇した。同じ傾向は、CERTとOSBPを二重発現抑制した細胞においても見られた。これらの結果は、膜接触部位での脂質輸送がCa2+輸送と共役している可能性を示唆している。(3)細胞分裂期CARTSの解析:分裂期細胞においてもCARTSがEg5陽性の微小管上に存在していることがわかった。その動態をライブセルイメージングで調べるため、マーカーであるPAUF-GFPの安定発現株を樹立した。これによりCARTSがmidbodyに集積する様子を観察することができた。しかし、RFP-α-tubulinの一過性発現では明瞭な微小管を観察することができず、CARTSが微小管に沿って移動する様子は見ることができなかった。また、Eg5阻害剤であるmonastrolのCARTS局在への影響を調べたが、顕著な変化は見られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)小胞体-ゴルジ体接触部位の新規構成因子の探索:二次スクリーニングとして、MITのAlice Ting博士らによって確立されたプロテオミックマッピングと呼ばれる手法(Rhee et al., Science, 2013)を小胞体-ゴルジ体接触部位に適用する。具体的には、VAPと強く結合して膜接触部位に顕著に集積するOSBP PH-FFAT変異体にascorbate peroxidase 2(APEX2)を融合させ、VAP-OSBP-Sac1からなるコレステロール輸送複合体に結合しているタンパク質を過酸化水素存在下でビオチン標識する。その後、ストレプトアビジンビーズによって精製し、質量分析を行なう。すでに機能・局在解析を始めているタンパク質については、引き続き解析を進める。また、上記ビオチン標識がなされるかどうかをウェスタンブロッティングによって確認する。(2)小胞体-ゴルジ体接触がCa2+輸送に関与する可能性:VAPやCERT、OSBPの発現抑制細胞で、実際に細胞質からTGNへのCa2+の流入量が減少しているかどうかを明らかにするため、fluorescence resonance energy transfer(FRET)を利用したTGN特異的Ca2+センサーであるGo-D1cpv(Lissandron et al., Proc Natl Acad Sci USA, 2010)を用いて調べる。また、イノシトール1,4,5-トリスリン酸受容体の発現抑制細胞についても同様に調べる。(3)細胞分裂期CARTSの解析:VAPおよび、CERT、OSBPの発現抑制などCARTS形成が阻害される条件下で細胞分裂の進行に影響が見られるかどうかをライブセルイメージングで調べる。
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[Journal Article] γ-SNAP stimulates disassembly of endosomal SNARE complexes and regulates endocytic trafficking pathways2015
Author(s)
Inoue H, Matsuzaki Y, Tanaka A, Hosoi K, Ichimura K, Arasaki K, Wakana Y, Asano K, Tanaka M, Okuzaki D, Yamamoto A, Tani K, Tagaya M.
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Journal Title
Journal of Cell Science
Volume: 128
Pages: 2781-2794
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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