2015 Fiscal Year Research-status Report
4つのATP結合部位による細胞質ダイニンの活性調節機構
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15K18514
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
島 知弘 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60631786)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 協同性 / 分子モーター |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞質ダイニンは逆行性細胞内輸送を担い、多岐にわたる生命機能に深く関わるモータータンパク質である。近年、本研究代表者らによってモータードメインの結晶構造が解明されるなど、ダイニンの動作機構が徐々に明らかになりつつある。しかし、ダイニンは1つのモータードメイン内に4箇所の ATP 結合部位を有するというユニークな構造をとっており、これら4箇所へのATPの結合がいかにダイニンの運動を駆動するのかというダイニン動作機構の根幹をなす問題が未解決である。我々は一連の先行研究にて、1番目のATP 結合部位(AAA1)のヌクレオチド状態がダイニンの運動と連動しており、他の3箇所の状態がAAA1の活性に強く影響することを示したが、その詳細は明らかでない。 研究の進展を阻む大きな要因として、各運動ステップ中にダイニンと結合しているヌクレオチドの数や結合のタイミングを実測できていないことが挙げられる。我々の先行研究から、ダイニンのATPに対する解離定数はμMのオーダーであることが分かっている。しかし、全反射蛍光顕微鏡など従来の一分子計測法では、蛍光分子をnM領域以下の低濃度に抑えねば各輝点を弁別できないため、この測定は非常に困難であった。 この問題点を解決するため、本研究では次世代シーケンサーに採用されている1分子イメージング法のZero-mode waveguide 法(ZMW 法)を用いることにした。ZMW法は直径100 nmほどの微小穴に局所励起光を照射するため、μMオーダーの蛍光分子が存在しても背景光が劇的に低減した状態で分子の結合・解離を精度よく、しかもミリ秒以下の時間分解能で実測できる。実際に本年度の研究で、ダイニン1分子に対しての蛍光ATPの結合解離を高時間分解能で実測することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、ZMW法を用いて、1分子のダイニンに対するATPの結合解離を実測することに成功している。これは本研究の根幹をなす大きな成果で、今後の詳細な解析により、ダイニンの複雑な活性調節機構を明らかにできるものと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まずどのATP結合部位へATPが結合したのかの弁別について、変異体解析などの手法を用いて詳細な解析をすすめる。 また、微小管によるATP加水分解活性の上昇、およびモータードメインの二量体化による活性調節の際に、4箇所のATP結合部位が受ける影響について明らかにしていく予定である。
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