2015 Fiscal Year Research-status Report
高速原子間力顕微鏡による膜輸送タンパク質の動作機構の解明
Project/Area Number |
15K18517
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山下 隼人 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (10595440)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高速原子間力顕微鏡 / バイオイメージング / ナノ計測 / 膜タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
膜輸送タンパク質には、チャネルやトランスポーターなど、疾患に関わり創薬のターゲットとなるものが数多く存在するが、一方でその分子構造や動作機構が明らかにされたものは限られている。そこで本研究では、生体分子の動態をリアルタイムで直接観察できる高速原子間力顕微鏡(高速AFM)を用いて、膜輸送タンパク質の多量体状態や構造変化を1分子レベルで可視化し、その動作機構を明らかにすることを目的とする。本年度は、①生理溶液中において膜輸送タンパク質の分子構造を高分解能で可視化するための高速AFM装置の構築と②観察に適した膜輸送タンパク質試料の調整および条件検討を行った。①の高速AFM装置の構築にあたって、高いSN比でカンチレバーの振動振幅を検出可能なフーリエ振幅計測法の導入を行うと共に、高精度に走査可能なスキャナーの開発を試みた。XおよびY方向に圧電素子で駆動する機構を改良することで、スキャンの位置精度を向上させた。このスキャナーの性能評価を行うため、HOPG(グラファイト)のSTM観察を行った所、炭素原子が蜂の巣状に配列した原子構造を撮影することができた。また②の膜輸送タンパク質の高速AFM観察として、電位依存性プロトンチャネル(VSOP)の脂質膜への再構成と1分子イメージングを行った。その結果、直径10nm程度の球状分子と直径20nm程度のリング状構造の分子が脂質二重膜中で観察された。同様の構造形態は変異体S188Cでも観察され、さらに野生型をイメージング中にN末抗体を投与した結果、脂質膜中の分子に抗体分子が結合する過程が観察された。また、膜輸送タンパク質の膜中でのダイナミクスを観察可能にするため、集束イオンビームを用いて基板表面にナノメートルサイズの穴を作成し、脂質二重膜で覆うことにより、支持基板のない中空膜環境を構築することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膜輸送タンパク質を脂質膜中でナノメートルオーダーの空間分解能、ミリ秒オーダーの時間分解能で直接可視化する高速AFM装置の構築を行い、実際にAFM観察を行うための膜輸送タンパク質試料の準備がおおむね順調に進んだ。これにより1分子イメージングに取り組むことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に構築した高速AFM装置をもとに、引き続き膜輸送タンパク質の1分子イメージングに取り組んでいく。また、支持基板のない中空膜環境の作成条件を最適化し、膜輸送タンパク質の1分子レベルでのダイナミクスの観察に取り組む。これらをもとに、膜輸送タンパク質の挙動を解析し、動作メカニズムを明らかにする。
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Research Products
(2 results)