2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K18521
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮崎 直幸 大阪大学, たんぱく質研究所, 特任助教(常勤) (00634677)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 構造解析 / クライオ電子顕微鏡 / ウイルス / ファージ / 感染機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、昨年度末に蛋白質研究所に導入された最新のクライオ電子顕微鏡FEI Titan Kriosを用いて、近原子分解能での構造解析に取り組んできた。そして、昨年度、生理学研究所において撮影したデータを用いて0.9 nmの分解能で構造決定に成功していたブドウ球菌ファージの1つであるS13’の頭部の構造に関して、その最新のクライオ電子顕微鏡を用いることにより分解能が劇的に向上し、原子モデルの構築が可能となる0.4 nm以下の分解能での構造決定に成功した。さらに、そのクライオ電子顕微鏡のマップを用いて、キャプシド蛋白質の原子モデルの構築および構造精密化を行うことができた。現在、その構造を他のファージの構造と比較し、その類似点・相違点を調べているところである。さらに、尾部の構造を決定するためのデータの取得も行い、現在その構造解析を進めている。これまでのクライオ電子顕微鏡の観察の経験から、特に尾部の構造解析においては、高コントラストで観察できる位相差クライオ電子顕微鏡による撮影が有効であることが分かっていたので、Titan Kriosに備え付けられている新型の位相板であるVolta位相板を使ったデータの取得にも取り組んできた。そのVolta位相板を使うことで、本研究での研究対象とは異なるが、200 kDa以下の比較的小さなタンパク質の可視化に成功した。また、位相板を用いた自動撮影もできるようになり、位相板を使った状態で撮影したデータを用いて近原子分解能構造解析も出来るようになってきた。今後、黄色ブドウ球菌ファージの構造解析にも、このVolta位相板を用いて行っていく予定にしている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、昨年度末に蛋白質研究所に新たに導入された電子直接検出型カメラ、Volta位相板、収差補正器等を備えた最先端のクライオ電子顕微鏡を用いて、近原子分解能で構造解析するための試料作製法、撮影法、解析法の条件検討を行ってきた。 まずは、構造既知の直径約40 nmのPfVと呼ばれるウイルス様球状粒子を用いて、試料作製法、撮影法、解析法の検討を行い、0.4 nm以下の近原子分解能での構造解析に成功した。それを、黄色ブドウ球菌ファージの頭部の構造に応用し、黄色ブドウ球菌ファージS13’の頭部の構造を、近原子分解能で決定することができた。現在、他のファージの頭部の構造と比較し、その類似点・相違点を調べている。 さらに、蛋白質研究所の高性能クライオ電子顕微鏡に備え付けられているVolta位相板を用いた構造解析も、撮影条件や解析のノウハウを蓄積することで、近原子分解能での構造を決定することができるようになってきた。PfVやGroELのような構造既知の標準試料では、既に4 nm以下の分解能で構造を決定できている。 これらの状況を踏まえて、本来予定していた計画は概ね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度末に蛋白質研究所に導入されたクライオ電子顕微鏡による構造解析のノウハウは、これまでにかなり蓄積でき、本研究での研究対象である黄色ブドウ球菌ファージの頭部の構造を含め様々な試料で、近原子分解能の構造決定に成功してきている。そのため、本研究でのメインターゲットである黄色ブドウ球菌ファージS6の頭部の構造に関しても、同様に、蛋白質研究所の高性能クライオ電子顕微鏡を用いることで、今後さらに高分解能での構造決定が十分期待できる。 また、Volta位相板を用いた高コントラストのイメージ撮影および解析も可能となってきたので、今後は、本研究での研究対象である黄色ブドウ球菌ファージの構造解析にも応用することで、まだ構造決定ができていない尾部においても、近原子分解能での構造決定ができると考えている。 そして、それらの構造情報から、黄色ブドウ球菌ファージの宿主への感染に関わる分子装置の動作原理を原子レベルの解像度で理解することを目指す。
|
Causes of Carryover |
論文投稿の際に生じる英文校閲などの費用を予算計上していたが、今年度は論文投稿が間に合わなかったので、来年度に使用する。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定どおり、論文投稿に関わる費用として使用する。
|
Research Products
(3 results)