2015 Fiscal Year Research-status Report
分裂酵母における胞子への選択的ミトコンドリア継承機構の解明
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15K18525
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
高稲 正勝 群馬大学, 未来先端研究機構, 助教 (20573215)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 分裂酵母 / 胞子形成 / 減数分裂 / 細胞新生 / 胞子 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリア (Mt)は細胞の生存に必須なエネルギー生産を担うオルガネラであり、新規に生成されないため、細胞系列の維持には娘細胞がMtを適切に継承する必要がある。またMtの機能低下は代謝・神経疾患や老化の原因となる。分裂酵母の胞子形成時には、母細胞から新生胞子へ確実にMtが分配されるが、その分子機構は不明である。申請者はこれまでに胞子形成関連因子npg1遺伝子破壊株では胞子へのMt分配が異常になり、また胞子の生存率が低下することを発見した。これは胞子形成と共役したMt継承機構の存在を示唆する。本研究では胞子形成をモデル系として、Mtが胞子へ分配される動態やMt活性を高精度で計測する。また変異株を使用して分子遺伝学的に解析することで、細胞新生におけるMtの分配機構および品質管理機構の解明に迫る。平成27年度に実施した研究の成果は以下の通りである: (1)胞子形成因子Npg1の細胞内局在の解析 Npg1は減数分裂期IとIIの間に核内に2-3個のドットとして局在するため、染色体(分裂酵母では3本)やその他の核内構造との相互作用が示唆された。そこで既知のマーカータンパク質を利用して、セントロメア、テロメア、核小体とNpg1の局在を同時に観察して比較したが、Npg1のドットはいずれの構造とも局在が一致しなかった。一方、オーロラキナーゼB Ark1も核内でドット状に局在することが知られていたので、Npg1とArk1を同時に観察した所、両者の局在は非常に良く一致した。 (2)胞子形成因子Npg1とオーロラキナーゼB Ark1の遺伝学的相互作用 上記(1)の結果からNpg1とArk1の相互作用が示唆されたため、Npg1遺伝子破壊株と薬剤感受性Ark1変異株を交配させて、二重変異株を作製し、胞子形成効率を観察した。二重変異株では野生株や単独変異株と比較して極端に胞子形成効率が低下しており、いわゆる正の遺伝学的相互作用が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当研究課題の目的は、申請者が発見した分裂酵母の胞子形成因子Npg1の活性および局在の制御機構の解明と、胞子形成時における適切なミトコンドリア継承機構の解析である。 現在までにNpg1はオーロラキナーゼB Ark1と核内で共局在すること、npg1変異とark1変異は胞子形成において正の遺伝学的相互作用を示すことを明らかにした。またArk1の活性がNpg1の局在を制御することを示唆する予備実験の結果も得られている(上記研究実績の概要では省略)。さらにark1は減数分裂期IとIIの間に、npg1と同様に発現量が増大することが知られている。これらの結果はArk1が胞子形成時にNpg1の局在や活性を制御していることを強く示唆するものである。 細胞内シグナル伝達に関与するキナーゼとしてのark1の機能は、減数分裂期I以降以外の時期では詳細に解析されており、有用な変異株も既に多数製作されている。本研究でもそれらの解析法のノウハウや変異株を流用することができる。具体的にはNpg1にはArk1による予想リン酸化サイトが複数存在するため、これらの残基を非リン酸化型に改変した変異npg1株を作製して解析すれば、Ark1によるリン酸化とNpg1の活性の関係を厳密に検証することが可能である。 従って本研究の目的の一つであるNpg1の上流の制御機構の解析についてはほぼ見通しが立ったと言える。 また今後の実験に必要な変異株はほぼ作製が完了しつつある(研究実績の概要では省略)。 よって現在までに得られた研究成果は本研究課題の研究目的に則して、概ね順調な達成度であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までにオーロラキナーゼ Ark1が胞子形成因子Npg1の局在や活性を制御することを示唆する結果が得られている。今後はこの仮説を厳密かつ詳細に検証することで、Npg1の上流の制御機構を明らかにする。具体的には以下の実験を予定している:(1)ark1変異株におけるNpg1の局在の観察。;(2)質量分析によるNpg1のリン酸化状態の解析。;(3)疑似リン酸化型/脱リン酸化型 npg1変異株の機能解析。 本研究課題のもう一つの目的である、胞子へのミトコンドリア継承機構の解析において、当初はミトコンドリアの活性をGFPベースのレポーターで可視化する予定であったが、市販の蛍光指示薬でミトコンドリアの酸化還元電位や活性酸素の状態を可視化する方が簡便かつ安価であることが判明したので、今後はそちらを使用する。
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Causes of Carryover |
当初は顕微鏡用CMOSカメラ ORCA-Flash 4.0 V2(浜松ホトニクス社製)を購入する予定であったが、申請者の異動に伴い研究環境が変化し不要になったため、その分の研究費を次年度分に繰り越した。また同様の理由で購入を予定していた消耗品が一部不要になったため、その分の研究費を次年度分に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後は翌年度以降に請求する研究費と合わせて、研究の進捗状況を鑑みつつ、高開口数対物レンズの購入やパートタイム技術員の雇用等に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)