2016 Fiscal Year Research-status Report
グルコース欠乏環境におけるグルコース輸送体の細胞膜局在を制御する分子機構の解明
Project/Area Number |
15K18533
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
豊田 雄介 久留米大学, 分子生命科学研究所, 助教 (10587653)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 低グルコース / 糖輸送体 / Ght5 / リン酸化 / TORC2 / Ksg1 / lgs / 分裂酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
分裂酵母が0.1%以下の低グルコース濃度で増殖するためには、8つの糖輸送体(Ght1-8)のうち、Ght5だけが必須である。低グルコース環境で発現誘導されたGht5が細胞表面に局在することが増殖に必要であることから、Ght5の細胞表面局在を保障・促進する分子機構を追求している。本年度、Ght5カルボキシ末端寄りのセリン残基(Ser536)はリン酸化されることを見出し、そのアラニン置換体(S536A)を発現する変異細胞は低グルコースでの増殖に欠損を示すだけでなく、Ght5(S536A)-GFP融合蛋白質は細胞表面局在に欠損を示し、Ser536リン酸化の生理的な重要性を見出した。一方、Ser536のアスパラギン酸(S536D)、グルタミン酸置換体(S536E)は、低グルコース環境での増殖や細胞表面局在に欠損を示さなかった。Ser536前後のアミノ酸配列から、Ser536は糖代謝を調節するTORC2(Target Of Rapamycin Complex 2)経路によってリン酸化されると予想された。実際、TORC2関連因子の一つKsg1(PDK-like/ホスホイノシチドトリスリン酸依存キナーゼ様キナーゼ)の変異細胞でSer536リン酸化が減退していた。また、TORC2の下流に位置するGad8/Akt様キナーゼの変異細胞でのSer536リン酸化の減退は、完全培地でのみ観察された。次に、小胞体、ゴルジ体を経て細胞表面にGht5が発現するために必要な細胞内輸送機構に欠損を示す変異株におけるGht5 Ser536リン酸化を検討した。興味深いことに、これらの変異体では、S536リン酸化は顕著に減退していたことから、Ser536残基はGht5が細胞表面に局在してからリン酸化されると予想された。これは、Ksg1/PDK1を活性化させるPI3が細胞質側の細胞膜で生成することと矛盾しない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、分裂酵母が低グルコース環境で増殖するために必須なGht5の細胞表面への局在化を制御する分子機構の解明である。本年度、Ght5の細胞表面への局在化に機能するリン酸化修飾(Ser536)を見出し、そのリン酸化欠損変異体Ght5(S536A)-GFPは細胞表面局在に欠損を示すだけでなく、低グルコース環境での増殖に欠損を示した。この発見により、本研究の焦点はGht5 Ser536のリン酸化制御とその生理的な機能に絞ることができ、次年度に目指す論文発表に必須な内容の骨子ができたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、分裂酵母が低グルコース環境で増殖するために必須なGht5の細胞表面への局在化を制御する分子機構の解明である。平成28年度の結果により本研究の焦点は、Ght5 Ser536リン酸化の制御とその生理的な機能の解析に絞られた。最終年度となる本年度は以下の実験を主に実施する。Ksg1/PDK1やGad8/AktによるGht5 Ser536リン酸化をin vitroで示す。そして、Ght5(S536A)-GFPは細胞表面局在に欠損を示すことを見出したので、FRAP (Fluorescent Recovery After Photobleaching)やGFPの代わりに(紫外線により緑蛍光が赤に変換される)mEOS2を用いて主にイメージングによりGht5の細胞表面局在の維持におけるSer536リン酸化の機能を追求する。以上の実験によりGht5 Ser536リン酸化の生理的な機能への示唆を得て、それらの結果を論文として公表する。
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Causes of Carryover |
当該年度(H28)中に、機器(エレクトロポレーター)を購入する必要が生じたので、予算の前倒しを申請しました。当該機器の割引率について納入業者から確定の通知が無い状態での前倒し申請でしたので、今回のような若干額の「次年度使用額」が生じた次第です。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度(H29)に計画している実験には、アフィニティー精製やウエスタンブロット検出等の比較的高額な消耗品(抗体、結合ビーズ等)を用いる機会が多いため、生じた「次年度使用額」はこれらの消耗品の購入に充当する予定です。
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