2015 Fiscal Year Research-status Report
転写因子と協調して生殖細胞分化を制御する機構の解析
Project/Area Number |
15K18539
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
村上 和弘 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 助教 (60455368)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 始原生殖細胞 / 転写因子 / 幹細胞 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
Nanog, Prdm1, Tfap2c, Prdm14の相互因子の同定; テトラサイクリンの添加によりN末端に3xFlagが融合したそれぞれのタンパク質を発現誘導できるマウス胚性幹細胞 (mESC)を樹立した。それらのmESCより始原生殖細胞様細胞 (PGCLC)前駆細胞を誘導し、テトラサイクリン添加24時間後の初期PGCLCを回収してFlagタグに対する抗体で免疫沈降を行い、質量分析法により相互作用因子の網羅的同定を試みた。 Nanog, Prdm1, Tfap2c, Prdm14のゲノム上の局在領域の同定; PGCLC前駆細胞にテトラサイクリンを添加し、3時後の細胞を回収してそれぞれの因子に対する抗体で免疫沈降を行い、初期PGCLCにおけるゲノム上の局在領域の同定を試みた。また、得られたデータをエンハンサー・プロモーターを示すH3K4me1、H3K4me3、H3K27me3、H3K27acのChIP-seqデータおよび遺伝子発現データと照らし合わせることで、それぞれの転写因子が直接的に制御するエンハンサー・プロモーター領域とその制御を受ける下流遺伝子の同定を試みた。 PGCLC前駆細胞におけるゲノムワイドなH3K9me2、DNAme領域の同定; 共同研究先のグループと協力してmESC、誘導1日目、2日目のPGCLC前駆細胞において、H3K9me2・3、DNAmeに対するChIP-seqを行い、ゲノム上の詳細な修飾領域を明らにすることを試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Nanog, Prdm1, Tfap2c, Prdm14の相互因子の同定; まずは、初期PGCLCにおけるNanogの相互作用因子を明らかにすることを試みた。独立した実験を2度行ったが再現性のある結果は得られなかった。細胞数および細胞可溶化条件など実験条件のさらなる検討が必要と思われる。Prdm1, Tfap2c, Prdm14に関しては、発現プラスミドへのクローニングを行いmESCを樹立した。免疫沈降~質量分析の解析条件が決定し次第、これらの因子についても速やかに解析を行える状態である。 Nanog, Prdm1, Tfap2c, Prdm14のゲノム上の局在領域の同定; まずNanogに着目し、初期PGCLCにおいてNanogに対する免疫沈降を行いシークエンスを行うことで初期PGCLCにおけるゲノム上のNanog局在領域を明らかにすることができた。また、それらのデータをエンハンサー・プロモーターを示すChIP-seqデータおよび遺伝子発現データと照らし合わせることで、転写因子NanogがPGCLC誘導過程において直接制御する下流遺伝子群を明らかにすることができた。 PGCLC前駆細胞におけるゲノムワイドなH3K9me2、DNAme領域の同定; mESC、PGCLC前駆細胞においてChIP-seqを行うことで、H3K9me2・3、DNAmeのゲノム上の詳細な修飾領域を明らにすることができた。得られた結果から、分化に伴いそれぞれの修飾がゲノム上の位置を変えていく様子が明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
Nanog, Prdm1, Tfap2c, Prdm14の相互因子の同定; 初期PGCLCにおいてNanogの相互作用因子を同定することを目標に、解析条件のさらなる検討を行う。最適な条件が決定し次第、速やかに他の因子(Prdm1, Tfap2c, Prdm14)についても免疫沈降~質量分析を行い相互作用因子を同定する。一方で、3xFlagがうまく働かない状況も想定し、他のタグをつけた因子を発現誘導できるmESCの準備も進める。網羅的な解析により明らかとなる相互作用因子を、PGCLC誘導過程において個別に強制発現およびノックアウトし、PGCLC誘導効率への影響を見積もることで相互作用因子の機能の検証を行う。 Nanog, Prdm1, Tfap2c, Prdm14のゲノム上の局在領域の同定; Nanogに続き、Prdm1, Tfap2c, Prdm14についてもChIP-seqを行う。それぞれの因子が結合するエンハンサー・プロモーター領域を明らかにし、ルシフェラーゼアッセイによりそれぞれの転写因子がエンハンサー・プロモーター領域を直接制御するかどうかの検証を行う。 PGCLC前駆細胞におけるゲノムワイドなH3K9me2、DNAme領域の同定; 平成27年度に得られた結果をChIP-qPCRにより個別に確認する。また、ヒストン修飾とDNAメチル化の責任酵素をノックアウトしたmESC株を用いて、さまざまな段階の細胞からPGCLCの誘導を試み、PGCLC誘導過程におけるエピジェネティック機構の重要性を検証する。
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Causes of Carryover |
所属の変更および、他の教育・研究活動により研究の推進に遅れが生じた。質量分析の実験条件が決定しなかったため、試薬の発注およびその後の解析に遅れが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
所属先において研究計画を見直し、予定されている実験を速やかに実施する。質量分析に関しては詳細な条件を決定する。また、Nanog以外の因子 (Prdm1, Tfap2c, Prdm14)についてChIP-seqを行い、転写因子の制御関係を明らかにする。
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