2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K18541
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平島 剛志 京都大学, 再生医科学研究所, 特定助教 (10620198)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 多細胞ライブイメージング / 多細胞動態の定量 / 多細胞動態の数理モデル / バーテクスダイナミクスモデル / 精巣上体 / 上皮管 / サイズ維持 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度には、生体組織のサイズ維持機構を明らかにするため、マウスの精巣上体細管を実験材料として用い、(1)組織深部における細胞集団運動のライブイメージング、(2)細胞集団運動の定量、(3)数理モデル構築、の3点を主に行った。 上皮の管径を維持するやわらかな力学機構の解明に向けて、組織深部における管上皮のライブイメージングを行った。マウス胎仔の精巣上体細管は、組織表面から100um以上深部に位置しているため、二光子顕微鏡を用いてタイムラプス画像を取得した。その結果、分裂細胞に隣接している細胞集団が、分裂方向に応じて異なる挙動を示すことがわかった。すなわち、管円周方向に沿った細胞分裂に対しては、細胞集団が相対的に配置換えを起こす一方で、長軸方向に沿った細胞分裂に対しては細胞集団の相対的な配置換えは起きない。 取得時系列画像における細胞の相対的な配置換えを評価するために、先行研究で提案された手法を用いて、細胞の再配列運動を定量した。その結果、観察事実を定量的に示すデータを得ることができた。 これらの定量データをもとに、多細胞上皮組織の動態を表す数理モデルを構築した。細胞のアピカル面を多角形とみなし、頂点のダイナミクスの運動を表すバーテクスダイナミクスモデルを用いた。モデル解析の結果、組織内部における細胞分裂が及ぼす組織内細胞張力の時空間分布や、組織形態に対する細胞の再配列の影響を評価することができた。 これらの結果を、国際誌(査読付き)に論文を1報、和文総説として1報、取りまとめて発表した。他1報を國際誌に投稿しており、現在査読中である。また、国内学会で招待講演を1件、発表を8件、国際学会での発表を2件、行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の計画では、イメージングを中心とした細胞動態因子の定量解析のみ行う予定であったが、組織深部における細胞集団運動のライブイメージングと細胞集団運動の定量に加えて、それらの実測データを基にした数理モデル構築まで行うことができた。当初予定していた数理モデル構築は、主に平成28年度以降に行う予定であったため、当初計画以上に進展していると言える。現在、実験測定と数理モデル解析により提唱された新たな仮説を検証する実験を計画している。また、同じく平成28年度以降に行う予定であったノックアウトマウスなどを用いた摂動実験に関しては、予定していたノックアウトマウスに管径異常の表現型が見られたなかったことを確認した。これに関しては、代替案を試す予定である。 当初計画以上に進展した理由は、イメージングによる細胞動態の観察データ取得のプロセスが、計画していた予定よりも時間をかけずに進めることができたためである。器官培養系の準備は前もって整えておき、顕微鏡観察の設定も特に時間を要することもなかったため、実験動物ができた時点で、十分なサンプル数を取得する単純作業に打ち込むことができた。また、細胞動態の定量に関しては、先行研究を参考にした上で直観的な定量手法を採用したため、理解するまでの時間を短くすることができた。 多細胞動態の数理モデル化に関しては、実装する際のプログラミンの時間を予定よりも早く終えることができた。はじめに空間2次元に対応するプロトタイプを作成しておき、徐々に空間3次元版に拡張することで、デバッグの作業を効率良く行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
管径維持のための『多細胞力学システム』の存在を明らかにするための、イメージングを中心とした細胞動態因子の定量解析と数理モデル解析手法は、平成27年度までに確立した。これを利用し、摂動実験とそれに対する精巣上体管の応答解析を追加して行う。平成27年度に引き続き、ダブルノックアウトマウスや阻害剤・リコンビナントプロテイン添加アッセイを行うことで、野生型マウスの精巣上体細管との形態面での違いを定量的に調べる。特に、Wnt経路に着目し、解析を進めていく。摂動実験で得られたデータを平成27年度までに確立した数理モデルに組み入れることで、入力-出力応答を定量的に評価する。 平成27年度中に行ったノックアウトマウスを用いた摂動実験では、ノックアウトマウスに管径異常の表現型が見られたなかった。これは、遺伝子機能の補償機構が働いている可能性がある。Wnt経路に注目し、ダブルノックアウトマウスの解析を試みる。対象としているダブルノックアウトマウスは、国内に保有している機関が複数あるため、交渉して取り寄せる。他、阻害剤等を用いることで、結果の信頼性を補完しながら、解析を進めていく。
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Research Products
(13 results)