2015 Fiscal Year Annual Research Report
てんかん原因遺伝子プロトカドヘリン19による大脳皮質発生の制御機構の解明
Project/Area Number |
15K18544
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
林 周一 国立研究開発法人理化学研究所, 多細胞システム形成研究センター, 研究員 (50568938)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | プロトカドヘリン19 / 大脳皮質 / 行動解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトにおいて女性のみで発症する特殊なてんかんの原因遺伝子プロトカドヘリン19(Pcdh19)に着目し、脳の発達過程におけるPcdh19の機能を解明することを目的として研究を行った。マウスを用いて、発達期の大脳皮質と海馬におけるPcdh19の発現パターンの解析と機能解析、および個体の行動解析を行い、以下の結果を得た。 マウスの胎児期と生後初期の脳において、Pcdh19のmRNAは大脳皮質や視床、小脳を含む複数の領域に発現し、大脳皮質では主に第5層に広く発現していた。その遺伝子発現は、オスのPcdh19ヘミ接合型とメスのホモ接合型では完全に失われたが、ヘテロ接合型ではモザイクな分布を示した。これは、Pcdh19遺伝子をコードする2本のX染色体のうち、片方が各細胞でランダムに不活性化され、正常にPcdh19を発現する細胞とPcdh19を発現しない細胞がモザイクになったためと考えられる。このPcdh19のモザイクな発現が、ヒトでは女性限定のてんかんを引き起こす可能性があり、興味深い。さらに、子宮内電気穿孔法による蛍光ラベルを用いて、大脳皮質内の樹状突起の形態を観察する実験系を構築した。この実験系を用いて、野生型とPcdh19欠損型マウスにおける樹状突起の形態比較を継続して行っている。また、共同研究により網羅的な行動解析を行った結果、Pcdh19欠損型マウスでは情動に関連する行動異常が観察された。 研究期間内にマウスの行動解析を計画通り遂行し、Pcdh19欠損マウスにおける大脳皮質の樹状突起を観察する実験系を構築することができた。これは、Pcdh19遺伝子の変異や欠損によるヒトの病気の原因を明らかにする上で重要な成果である。
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