2016 Fiscal Year Research-status Report
受精カルシウム波の伝播を担う新規チャネルの同定とカルシウム波の生理的意義の解明
Project/Area Number |
15K18547
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
高山 順 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, 研究員 (20574114)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 受精 / 受精カルシウム波 / イオンチャネル / RNAiスクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に行った局所波と大域波の関係の解析およびカルシウム波のシミュレーション結果を、それ以前に行った精子TRP-3チャネルの解析結果と合わせて論文として報告した(Takayama and Onami, 2016)。また、昨年度までに樹立した新しい観測法を用いて得られた動画像に対し、画像処理方法を確立し、定量化を行った。さらに、より高速で簡便な定量法を考案した。また、得られた定量データを直感的に把握する可視化手法を考案し、異常検出に役立てることに成功した。昨年度までに、生殖腺で発現しかつカルシウムを透過すると予想される42のチャネル遺伝子をリストアップし一部解析を終えていたが、本年度はその解析を完了した。その結果、リアノジン受容体をコードするunc-68遺伝子を破壊すると、局所波および大域波の両方が減弱することが示唆された。同様の表現型はunc-68遺伝子の機能減弱変異であるunc-68(kh30)を用いた実験でも観察された。次に、unc-68(kh30)の雌雄同体と、野生型の雄を掛け合わせて受精カルシウム応答を観測した。その結果、前述の自家受精の実験と同様の表現型が観察された。したがって、unc-68変異体における受精カルシウム応答の異常は精子が原因ではないことが示唆された。以上の結果および、それ以前の解析結果をふまえ、精子のTRPチャネルと卵のリアノジン受容体の相互作用により、受精カルシウム波が惹起されるという仮説を考案した。ただしunc-68変異体の異常が、発育不全などに由来している可能性は否定できていない。一方、unc-68の発現部位を同定するため、CRISPR-Cas9法の実験系を確立した。この実験系を用いて、GFP融合UNC-68タンパク質を発現する線虫系統を樹立した。観察の結果、頭部の筋肉と、生殖腺体細胞に発現が見られたが、卵で明確な発現は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までの成果を一部含む論文が出版された。またスクリーニングを終え、定量化・可視化手法を樹立した。さらに候補遺伝子の絞り込みが行われ、変異体を用いた解析、およびその後のより詳細な機能解析まで行った。以上のことからおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
unc-68の機能解析を引き続き行い、TRPチャネルとリアノジン受容体のカップリングの可能性を追求する。また、その他の候補遺伝子(gtl-1, nmr-2)についても解析を行う。gtl-1はTRPMチャネルをコードするが、gtl-1(RNAi)では明確な異常が検出された。ただしこの異常はカルシウムの恒常性維持の異常の可能性が否定できず、詳細な検討を行わなければならない。nmr-2はNMDA受容体をコードし、nmr-2(RNAi)ではやや減弱した応答が観察された。これらの遺伝子について変異体を用いた解析およびその後の機能解析を行う。
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Causes of Carryover |
ほぼ計画通り使用したが、消耗品の使用量が計画よりも若干少なかったため9千円を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した9千円を分子生物学実験に使用する消耗品代として使用する。
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