2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K18551
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
海老根 一生 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任研究員 (90590399)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 植物分子生物学 / オルガネラ / 液胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
液胞は植物細胞の体積の90%以上を占める巨大なオルガネラで,真核生物のリソソームと共通する「不要物の分解」に加え,物質の貯蔵,膨圧の発生,空間充填など,植物に特有の機能を有している.これらの機能を発現するためには,液胞機能を支える種々の物質が液胞へ正確に輸送される必要があり,その輸送経路が複数あることが明らかになっているが,それぞれの経路の制御メカニズムの詳細は明らかになっていない.本申請課題では膜融合の実行因子であるSNAREに注目し,液胞膜のSNAREによる複数の液胞輸送経路の詳細な分子メカニズムの解明と,それぞれの輸送経路が植物の高次機能発現において果たす役割の解析を通して,液胞における膜融合制御の仕組みと意義を明らかにすることを目指している. 植物の液胞に局在するタンパク質の一部(VHP1とVHA-a3)は小胞体からゴルジ体を経由せず直接液胞へと輸送される.一方,われわれの研究から,液胞輸送経路には少なくとも3つの経路があることが示されている.これらの関係を明らかにすることを目的として,VHP1やVHA-a3の局在を液胞輸送の変異体において調べたところ,これらがRAB5依存的でRAB7やAP3に依存的な経路で運ばれるタンパク質と同じ挙動を示すことから,この液胞輸送経路が小胞体から液胞への直接的な輸送経路であることが示唆された. VAM3は液胞に局在するSNAREの一つであり,その変異体であるsgr3-1ではVAM3を含むSNARE複合体形成の一部にのみ異常があることが明らかになっている.今年度はその制御メカニズムを明らかにするべく共免疫沈降法による相互作用因子への変異の影響の解析を試み,複数のタンパク質の相互作用が変化していることを示す結果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標としてGFPとTagRFPを用いたSNARE間のFRET解析による液胞膜融合可視化を挙げていたが,植物の表現型に影響がない蛍光タンパク質とSNAREの組み合わせの検討に想定以上の時間を費やした結果,この解析については当初の計画より遅れており,現在解析用の形質転換体が作製された段階である.また,sgr3-1変異の影響を明らかにするべく,今日免疫沈降法による野生型のVAM3とVAM3E180K(sgr3-1型)の相互作用因子を計画していたが,共免疫沈降の条件や共沈降してきたタンパク質の検出法の検討を行った結果,両者の共沈降物に差が見られる条件が見つかった.現在このサンプルをもとに,質量分析によるタンパク質の同定が進行しているところである. これら当初計画していた実験の他,近年小胞体から液胞に直接運ばれることが報告されたタンパク質について,我々が報告した3つの液胞輸送経路のどれと同じ挙動を示すか解析した結果,これがRAB5依存的,RAB7とAP3非依存的経路と同じ挙動を示すことを明らかにした.これはRAB5による液胞輸送制御の一つが小胞体からの直接的な輸送経路であることを示唆する結果であり,現在関連因子の多重染色により,この2つが直接的に作用しているかを解析する準備を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
VAM3とsgr3-1の相互作用因子の比較については,当初の予定通り質量分析による相互作用因子の同定をすすめ,これらの因子の細胞内局在の解析と液胞のSNAREとの相互作用の解析を通して,同定した因子の機能と液胞膜融合の関係を明らかにしていく予定である.また,FRETを用いた液胞膜融合時のSNARE複合体形成についても,野生型VAM3およびsgr3-1変異型の双方に対して進めていく予定である.これに加え,新たに見つけたRAB5依存的,RAB7とAP3非依存的液胞輸送経路と小胞体から液胞への直接輸送経路の関わりについて,個々の因子の局在を異なる蛍光タンパク質を付与させて発現させ,同一細胞における多色の蛍光観察を行い,発生ステージに応じた液胞の形態変化に併せてそれぞれの局在パターンを解析することで明らかにする.
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Causes of Carryover |
当該研究の遂行において,年度後半においては研究の遂行が順調であったものの,前半において遅延があったため,国際学会等での研究成果の報告が行われず,そのために申請していた助成金が使用されなかった.また,同様の理由で,質量分析などの解析に必要な予算の執行が次年度に使われる予定となった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該研究の初年度に申請したように,物品費,学会等の参加には当初の予定通りの額を使用する.また,これに加え,一部の研究の遅延分および研究室の移転に伴う必要機器・消耗品の購入等に次年度使用額分の助成金を使用する計画である.
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Research Products
(1 results)