2015 Fiscal Year Research-status Report
ジベレリン信号伝達に関与するNtCDPK1の自己リン酸化の生理的意義の解明
Project/Area Number |
15K18555
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
伊藤 岳 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30636139)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 自己リン酸化 / キナーゼ / カルシウム / 信号伝達 / 基質特異性 / 活性制御 / ジベレリン / 植物ホルモン |
Outline of Annual Research Achievements |
タバコのbZIP 型転写因子RSG は植物ホルモン・ジベレリン(GA) の内生量調節に関与する。RSG は14-3-3 によって負に制御されている。カルシウム依存性タンパク質リン酸化酵素NtCDPK1 はRSG をリン酸化し、RSG と14-3-3 の結合を促進する酵素として単離された。NtCDPK1 はRSG をリン酸化するだけでなく、自己リン酸化されることも明らかになった。本研究は、NtCDPK1 の自己リン酸化部位を同定し、NtCDPK1 の自己リン酸化が基質のリン酸化に与える影響を明らかにすることを目的とした。 CDPK は植物のカルシウム信号伝達において中心的な役割を果たしており、遺伝学的な解析から多くの生理的な機能が明らかにされてきた。しかしながら、分子レベルでのCDPK の機能制御機構に関して未解明な点が多い。CDPK は多くのキナーゼとは異なり、触媒領域のactivation loop以外の部位が自己リン酸化されると予想されるが、その生理的な意味の解明には至っていない。 平成27年度の研究実績として、質量分析により、NtCDPK1の自己リン酸化部位を同定した。続いて、自己リン酸化部位に非リン酸化変異であるAla 置換、および疑似リン酸化変異であるAsp 置換を導入し、RSG のリン酸化能やキナーゼ活性への影響を調べた。さらに、アミノ酸置換がNtCDPK1 過剰発現植物の発芽率に与える影響を調べた。本研究により、NtCDPK1の自己リン酸化は基質リン酸化能に影響を与えるという新たな知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の計画通り、以下の実験を行った。(1) NtCDPK1 の自己リン酸化部位を質量分析で同定した。(2) 自己リン酸化部位に非リン酸化変異であるAla 置換、および疑似リン酸化変異であるAsp 置換を導入し、RSG のリン酸化能やキナーゼ活性への影響を調べた。(3) アミノ酸置換がNtCDPK1 過剰発現植物の発芽率に与える影響を調べた。また、本研究課題に加えて、自己リン酸化部への変異の導入によりNtCDPK1と14-3-3の結合様式についても新たな知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究計画に沿って、(1) 植物細胞内でのNtCDPK1 の自己リン酸化の検出、(2) 変異型NtCDPK1 の細胞内局在の解析、(3) NtCDPK1 の新たな基質の探索を行う。また、自己リン酸化部位への変異の導入により、14-3-3はこれまでに見つかっていない結合様式を介してNtCDPK1に結合している可能性が示唆された。このような結合は、14-3-3がNtCDPK1からRSGに効率よく受け渡されるために必要と考えられる。14-3-3は真核生物に広く存在するタンパク質で、多くのリン酸化タンパク質に結合することで標的タンパク質の機能を制御している。標的タンパク質に14-3-3を素早く受け渡す仕組みは細胞内の信号伝達を正確に伝えるために重要であると思われる。14-3-3のNtCDPK1への結合様式を明らかにすることができれば、植物のみならず多くの真核生物における14-3-3を介した信号伝達の制御機構を解明する一助になると考える。そこで、平成28年度は本研究課題であるNtCDPK1の自己リン酸化の生理的意義の解明に加えて、NtCDPK1と14-3-3の結合についても解析を進める。
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Causes of Carryover |
平成27年度の研究計画で記述したように、質量分析でNtCDPK1 の自己リン酸化部位を同定したが、想定以上に実験が順調に進み、費用を少なく抑えることができた。したがって、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の研究計画に沿って、平成28年度分として申請した助成金を使用し、ジベレリン信号伝達に関与するNtCDPK1の自己リン酸化の生理的意義を解明する。また、今後の研究の推進方策で示したようにNtCDPK1と14-3-3の結合について興味深い知見が得られたので、平成27年度の未使用額はNtCDPK1と14-3-3の結合様式を詳しく調べるために使用する。
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Research Products
(4 results)