2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K18557
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
光増 可奈子 熊本大学, 自然科学研究科, 特別研究員 (00711839)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | サツマイモネコブセンチュウ / 植物 / ムシゲル / 誘引物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物から分泌されるサツマイモネコブセンチュウの誘引物質の単離・精製を、①作物や植物の根からの単離・同定、②シロイヌナズナ種子ムシゲルからの単離・同定、といった二通りの方法で進めた。インゲンの根由来のサツマイモネコブセンチュウ誘引物質の探索を行った。インゲン根抽出物を水溶性画分、脂溶性画分に分画したところ、誘引物質は水溶性画分に分離された。さらに限外濾過、ゲル濾過による活性成分の分画を試みたが、これらの方法では誘引物質を効果的に分画できなかった。また、インゲンの培養に用いたレカトン自体から、誘引活性成分が滲出することが判明したため、誘引物質の生成に用いる材料と調製方法を見直した。シロイヌナズナ根からの誘引物質の単離・同定を試みたが、精製に供試できるだけの試料を得ることが困難であった。セイヨウミヤコグサの培養根から単離されたSuper Rootを、液体培養して得られる培養液中に分泌された誘引物質の精製を行った。限外濾過、脱塩、ゲル濾過、陽イオン交換クロマトグラフィー、逆相HPLCによる分画によって、活性を示すフラクションを絞り込むことができた。 シロイヌナズナの種子ムシゲル由来の誘引物質は、マンナン関連化合物である可能性が考えられていた。そこで、種々のムシゲル構成成分を用いて誘引試験を行ったところ、グルコマンナンに強い誘引活性が認められた。グルコマンナン中の活性中心の構造を明らかにするために、構成糖であるグルコースやマンノースを含む種々のオリゴ糖を用いて誘引試験を行った。その結果、誘引活性を持つには、グルコースとマンノースの両方を含む構造が必要であることが分かった。また、作物の原種や様々な植物の種子についても誘引試験を行い、シロイヌナズナ以外の植物の種子からも誘引物質が分泌されていることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請書に記載した内容について、概ね実施できた。しかし、誘引物質の抽出や用いる植物等について、改良や変更が必要になった部分があった。種子を用いた実験では、活性中心の構造に関する部分的な情報を得るに留まった。植物種子の誘引試験では、植物やセンチュウの分布域と誘引活性との相関解析を行うには、さらに試験数が必要である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の結果を基に、さらに解析を進め、誘引物質を単離・同定する。誘引物質の同定が出来た場合、各種植物の誘引物質が同じであるか、種ごとの誘引物質の構造決定を行う。また、誘引活性や誘引物質の構造と、植物やセンチュウの種類及び分布域との対応付けを行い、それらの間の相関関係について調査する。
|
Causes of Carryover |
当該年度の計画中で、変更・改良点が出てきたため、実施できなかった実験があり、その分の研究費について次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き、誘引物質の精製と構造解析を進める。また、さらに種々の植物の種子を入手し、誘引試験を実施する。
|
Research Products
(4 results)