2015 Fiscal Year Research-status Report
性フェロモン応答神経系とその機能のホルモンによる調節
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15K18570
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
中田 友明 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 講師 (50549566)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ペプチドフェロモン / ソデフリン / 内分泌 / 鋤鼻器 / 繁殖制御機構 / ペプチドフェロモン |
Outline of Annual Research Achievements |
該当年度申請者は、脊椎動物の性フェロモン作用機序を明らかにする目的で交付申請書に記した、(1)イモリの雄性フェロモン(ソデフリン)の受容体遺伝子の同定、(2)受容細胞の内分泌調節機構の解明の計画に照らし、下記の実験研究を行い、一定の結果を得て成果を学会等で発表した。 (1) ソデフリン受容体の同定 ソデフリンの受容体が属すると思われる2型鋤鼻受容体(V2Rs)はイモリで300種ほどの多重遺伝子群を形成し、他生物で確かめられている通り、鋤鼻感覚細胞に単独で発現していると推測される。単一の受容細胞に1種の受容体のみが発現している特性を利用して、顕微鏡下で採取した単一のソデフリン受容細胞から、PCR法での目的の受容体遺伝子のクローニングならびに単一細胞のmRNA(トランススクリプトーム)の解析を試みた。 (2) ソデフリン受容細胞の内分泌調節機構の解明 繁殖関連ホルモンの中枢である脳下垂体と卵巣を除去したメスイモリはソデフリンに対する応答性を受容細胞レベル、行動レベルで失うが、繁殖期に雌で分泌量の高まるホルモンである17βエストラジオールとプロラクチンの投与によってソデフリンに対する各レベルでの応答性が観察されるようになる。雌のイモリがソデフリン受容・応答能を獲得する際に、受容細胞にいかなる変化が起きているのかを調べたところ、V2Rs(ソデフリン受容体を含むと思われる)に共役するGタンパク質(Gαo)を発現する感覚神経細胞の新生が上記二つのホルモンによって誘導されることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度は第一に、パッチクランプ等の単一神経細胞のハンドリング技術に長けた研究者に指導を仰ぎ、マイクロマニュピレーター操作により、解離した鋤鼻感覚神経細胞の中からCa2+ imagingで同定したソデフリン受容細胞を顕微鏡下で単離する手技の確立に成功した。 その後、定法に従い単一のソデフリン応答細胞から得たcDNAを鋳型にPCR法での遺伝子クローニング、ならびに単一細胞でのトランススクリプトーム解析を行った。現在解析が終了している試料からは、未だソデフリン受容体として確証できるものを得られていない。本年度に計画した実験での技術的な最大の課題は、フェロモンに対して特異的に神経応答する鋤鼻細胞を生きた状態でかつ単独で採取することであり、その点はクリアできたものの、交付申請時に記載した、当該年度中にソデフリンの受容体をクローニングするという計画に対しては、やや遅れていると判断した。 一方で28年度以降に計画していた、ソデフリン受容の内分泌調節機構の解明については受容細胞の神経新生が17βエストラジオールとプロラクチンの投与によって起こることなど示す結果を得るなど、計画以上に進展した箇所もあった。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度に成し得なかった単一細胞から目的の遺伝子をクローニングする箇所については、現状様々な研究キット試薬や研究プロトコルが入手可能であるため大きな技術的課題は見当たらず、当該研究に適したものを選択・適応し再解析を試行していけばよいと考えている。また、単一細胞からでは採取できるmRNA量に限りがあるため、同時に複数個のソデフリン応答細胞を採取して実験をするなど、今後は採取する細胞数についても検討を重ねたいと思っている。 ソデフリン受容体遺伝子のクローニングと、同受容体タンパク質の再構築系によるフェロモン受容能の確認後は、当初の計画通り、in situ hybridization法による局在の解析、脳内のフェロモン受容応答神経系の解析を順次行う計画である。
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Causes of Carryover |
当該研究において次年度使用額が1,660円生じているが、購入業者や試薬メーカーの年度末割引等で定価より割り引かれた消耗品があったため生じたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額1,660円は次年度予算と合わせて、試験管等の消耗品の購入のために使用する計画である。
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