2016 Fiscal Year Research-status Report
魚類個体の行動の左右非対称性が群れ行動に与える影響
| Project/Area Number |
15K18574
|
|---|
| Research Institution | National Institute for Basic Biology |
|---|
Principal Investigator |
八杉 公基 基礎生物学研究所, 神経生理学研究室, NIBBリサーチフェロー (50722790)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
| Keywords | 魚類 / 行動 / 左右非対称性 / 認知 / メダカ |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
魚類の各個体に見られる左右非対称な行動や反応が、群れという統一された動きの中で個体間の相互作用に与える影響を明らかにすることを目的として研究を行った。材料にはヒメダカを用いた。本年度は、前年度の予備的な実験で得られた知見を基に適切な装置・条件を設定し、摂餌行動・同種他個体への反応・捕食者への反応・自由遊泳・逃避行動における左右差を調べ、個体レベルでの行動の左右非対称性の検出と行動間の左右差の関連性を解明するための行動実験を行った。現在、実験結果の解析を進めており、結果の一部は平成28年7月に開催された第39回神経科学大会で発表した。また行動実験を通して、本研究の要である捕食者や同種他個体といった複数個体を同時に扱う実験の難しさを再認識した。このような状況を解決する方法として、申請者の所属研究室のテーマである「ヴァーチャルメダカを用いた魚類の同種他個体認知」に着目した。捕食者や同種他個体といった相互作用の相手を3DCGモデルで作成し、行動を自由に操作することができれば、今後の群れを扱った行動実験が格段に遂行しやすくなる。そこで、ヴァーチャルメダカの作成、操作技術を習得すると同時に、それを用いたメダカの同種他個体認知に関する共同研究を複数行い、成果発表の準備を進めた。本研究の成果は、脊椎動物の行動や反応に見られる右利き・左利きが個体間の相互作用の中で果たす役割の解明につながると同時に、モデル生物として注目されるメダカの行動・生理の基礎的な理解にも大きく貢献できる。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
個体レベルでの行動の左右非対称性の検出と行動間の左右差の関連性を解明することを目的として、メダカ各個体について、アルテミアに対する摂餌行動・鏡を用いた同種他個体への反応・捕食者オヤニラミへの反応・Ｔ字路を使った遊泳方向選択・視覚刺激に対する逃避反応における左右差を調べるための行動実験を行った。現在、撮影した動画データからの解析を進めている。このうち、遊泳方向選択と逃避反応については、結果を第39回神経科学大会で発表した。同一個体についてこれだけ多くの行動形質を調べた研究は他になく、個体の行動の左右非対称性について網羅的かつ統一的に理解するためには必要不可欠なものである。しかしながら、同一個体での反復実験によってメダカにかかるストレスが予想以上に大きく、それを可能な限り軽減するためには個々の実験間隔を長く取らざるを得ず、当初の計画よりも遅れが生じる結果となった。
|
| Strategy for Future Research Activity |
本年度に撮った映像データの解析をさらに進め、個体レベルでの行動の左右非対称性の検出と行動間の左右差の関連性について、調べた結果を論文として発表する。そして論文化と並行して、群れを用いた行動実験を進める。逃避刺激の誘発、群れへの加入位置などの検証には、コンピュータで作成した視覚刺激に加え、メダカや捕食者であるオヤニラミの3DCGモデルを用いることも検討する。また現在、メダカの同種他個体認知に関わる外見的、もしくは行動的要素を調べる共同研究も進めている。これらの知見は群れの形成過程を理解するうえで役立つことが期待される。
|
| Causes of Carryover |
メダカにかかるストレスを可能な限り軽減するため、１個体で行う反復実験の間隔を長く取った結果、当初の実施予定よりも大幅に遅れが出てしまった。個体レベルでの検証結果の論文化、そして群れを用いた行動実験とその結果のまとめにかかる費用として予定されていた額が未使用のため、次年度使用額が生じてしまった。
|
| Expenditure Plan for Carryover Budget |
個体レベルでの行動の左右非対称性について、得られた結果を論文としてまとめて発表する。さらに、群れを用いた実験のための装置を開発し、個体の左右非対称性が群れ行動に与える影響について検証する。結果は随時学会などで発表し、最終的に論文として発表することを目指す。
|
Research Products
(1 results)
