2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K18582
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
平川 泰久 筑波大学, 生命環境系, 助教 (40647319)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 葉緑体 / オルガネラ / ヌクレオモルフ / 分裂 / DNA複製 |
Outline of Annual Research Achievements |
光合成器官である葉緑体は複数回の細胞内共生により進化してきた。陸上植物や緑藻、紅藻のもつ葉緑体がシアノバクテリアを起源とするのに対して、クロララクニオン藻は緑藻を細胞内に取り込む「二次共生」により二次葉緑体を獲得した。そのため、クロララクニオン藻の二次葉緑体は、植物の葉緑体とは異なるユニークな構造をもつ。二次葉緑体は4枚の包膜に囲まれ、その内側2枚と外側2枚の間の領域には共生した緑藻の核の痕跡であるヌクレオモルフをもつ。共生の過程で、葉緑体ゲノムやヌクレオモルフゲノムは大きく縮退しており、これらのオルガネラの機能は核コードのタンパク質に制御されていると考えられている。本研究では、二次葉緑体の制御機構がどのように進化してきたのかを明らかにするため、クロララクニオン藻の二次葉緑体の分裂機構、およびDNA複製機構に関する研究を進めている。 平成28年度は、昨年度行った細胞周期を通した網羅的トランスクリプトーム解析のデータを基に、複数のオルガネラDNA複製関連遺伝子の同定に成功した。ヌクレオモルフDNAの複製に関わるポリメラーゼ遺伝子はウイルスからの水平伝播に由来することが解り、二次共生のモザイク性を示唆する結果であった。また、葉緑体DNAとミトコンドリアDNAの複製に関わるポリメラーゼを新規に同定し、系統解析によりその進化過程を推定した。二次葉緑体の分裂関連遺伝子に関しても、2つに絞った候補タンパク質に対するポリクローナル抗体を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に続き、クロララクニオン藻の二次色素体制御に関わる複数の遺伝子の同定を行うことができた。また、得られた研究成果は、国内外の学会や投稿論文で発表することができた。細胞周期を通した網羅的トランスクリプトーム解析とヌクレオモルフDNAのポリメラーゼに関する研究成果は、国内シンポジウムおよび学術論文として報告し、葉緑体とミトコンドリアのDNAポリメラーゼに関する研究成果は、国内外の学会で発表し、投稿論文として現在準備中である。当初の計画通り、平成28年度の研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に引き続き、クロララクニオン藻の二次葉緑体の分裂に関わるタンパク質の新規同定を目指す。候補タンパク質に対して作成したポリクローナル抗体を用いて、蛍光抗体法・免疫電子顕微鏡法により詳細な細胞内局在の解析を進める。また、昨年度得られた研究成果は論文にまとめて投稿する。
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Research Products
(8 results)