2015 Fiscal Year Research-status Report
小胞体シャペロンの脊索動物における発生緩衝における役割の解明
Project/Area Number |
15K18584
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
佐藤 敦子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (90589433)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 発生緩衝 / 熱ストレス / シャペロン / ホヤ / 魚類 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物の発生は、ある程度までの環境ストレスや潜在的なゲノムの変異を緩衝する発生緩衝(developmental buffering)の作用によって、ほぼ一定に保たれている。発生緩衝の仕組みについては、半世紀ほど前から様々な仮説が立てられてきており、近年になって分子メカニズムが明らかにされつつある。本研究の研究代表者はこれまで、異なった温度環境に適応したカタユウレイボヤの2種の比較研究から、小胞体シャペロンが発生緩衝に重要な役割を果たしていることを発見した。本研究では、①温度ストレスがどのような発生経路に影響を及ぼすのか、これまで発生緩衝の仕組みのモデルとして用いてきたカタユウレイボヤを題材に、また、②小胞体シャペロンの発生緩衝における役割が脊索動物で保存されているのか、漁業資源を考慮に入れてニジマスを題材に用いて検証を行う。本年度は①のうち、カタユウレイボヤにおける13の発生関連遺伝子の発現レベル及び発現パターンが温度ストレスによってどのような影響を受けるか調べた。この結果、twist-c, Id, ZicLの3つの遺伝子で熱ストレスに応答した発現量の変化が見られた。さらにZicLでは、熱ストレスによって発現パターンの空間的変化も見られた。発生に関連した遺伝子は、ストレス条件化でも発現が非常に安定していることが知られており、特に空間的な変化が見られたのは本研究が初めてのことである。一方②のほうでは、英国で養殖されているニジマスから小胞体シャペロンdnajc3に相同な遺伝子をPCR法で単離した。すでに発表されているゲノムから予測された分子は4つあったが、そのうち3つはまだ見つかっていない。今後さらに究明していく必要がある。単利されたひとつの相同遺伝子の配列を用いてMOを作成し、インジェクションのおよび熱ストレス実験のための実験系を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホヤでのプロジェクトでは、ほぼ計画通りに進み、論文の執筆を行っている。しかし、査読の段階で異なった実験プランを求められ、出版までには至っていない。
魚類のプロジェクトでは、実験条件の設定に時間がかかったものの、条件設定をクリアすることができた。MOノックダウンのデータをすべてまとめるには至らなかったが、来年度にまとめられる可能性は十分ある。
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Strategy for Future Research Activity |
カタユウレイボヤでの発生遺伝子における環境ストレス応答を解析した結果は、現在投稿論文にまとめている。しかし、査読の段階で、いくつかの遺伝子を選んで行うという方法に批判的なコメントが寄せられており、魚類で同様の実験を行っても、論文を出版するプロセスが困難になる可能性がある。このため、発生遺伝子の環境応答に関する研究は、次世代シークエンサーなどを活用してゲノムレベルで見ていく必要があると考えられ、今後別途研究資金を獲得して行っていくことにした。
そのかわり、魚類での研究プロジェクトでは、カタユウレイボヤで発生緩衝に重要である可能性が考えられていた第二の小胞体シャペロン遺伝子dnajc10にも研究を拡大し、ホモログの検索およびMOノックダウン実験を行いたい。また、ノックダウンによって変化が見られた場合、合成RNAによるレスキュー実験も検討したい。
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Causes of Carryover |
一部消耗品を次年度発注としたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
発注を予定していたプライマー(マスのdnaj遺伝子検索用)を発注する。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Remarkable morphological differences between larvae of the Ciona intestinalis species complex: hints for a valid taxonomic definition of distinct species.2015
Author(s)
Pennati R, Ficetola F, Brunetti R, Caicci F, Gasparini F, Griggio F, Sato A, Stach T, Kaul-Strehlow S, Gissi C, Manni L.
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Journal Title
PLoS One
Volume: 10
Pages: 1-22
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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