2015 Fiscal Year Research-status Report
免疫プロテアソームサブユニット遺伝子の二型性の進化機構の解明
Project/Area Number |
15K18587
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
塚本 健太郎 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所, 助教 (00582818)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 遺伝子進化 / 対立遺伝子 / 免疫プロテアソーム / 獲得免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫プロテアソームサブユニット遺伝子PSMB8は、免疫プロテアソームのプロテアーゼ活性を有するサブユニットをコードし、MHCクラスI分子上に提示される抗原ペプチドの産生に中心的な役割を果たしている。軟骨魚類と条鰭類のPSMB8遺伝子にはアミノ酸配列で約20%もの違いが認められる二系統(A系統とF系統)が存在し、条鰭類では二型性を示す対立遺伝子として約4億年以上にわたり種をまたがって維持されている。また、この二系統は軟骨魚類ではパラログとして存在し、肉鰭類と一部の条鰭類では、F系統を欠き、A系統内からF系統様を対立遺伝子として再獲得している。 本年度は、PSMB8遺伝子の二型性が維持されてきた生物学的要因を明らかにするための足がかりとして、ゼブラフィッシュの培養細胞を用いてPSMB8サブユニットを含む免疫プロテアソームの誘導系を確立した。免疫プロテアソームに含まれるプロテアーゼ活性を有する3種のサブユニット(PSMB8, PSMB9,PSMB10)はインターフェロンγ(IFN-γ)によって発現が誘導される。まず、ゼブラフィッシュのIFN-γ遺伝子を大腸菌に発現させ精製を行い、組換えIFN-γを作製した。PSMB8遺伝子がF系統またはA系統のホモ個体それぞれから確立された線維芽細胞様の培養細胞株で組換えIFN-γの効果を調べたところ、添加前には殆ど検出されなかったPSMB8がIFN-γ添加によって強く誘導され、二次元電気泳動と質量分析によりPSMB8,9,10を含む免疫プロテアソームだけが形成されていることを確認した。従って、これらの培養細胞を使ってIFN-γの添加前後で切断特異性を比較することにより、PSMB8の二型間の切断特異性の違いを検出できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゼブラフィッシュの培養細胞に組換えIFN-γを添加することにより、MHCクラスI分子による抗原提示系に関与する主要遺伝子群の発現が条鰭類においても強く誘導されることが明らかとなった。また、組換えIFN-γにより培養細胞中の構成型プロテアソームを免疫プロテアソームへと変換する系が確立された。 PSMB8遺伝子の二型性が脊椎動物の進化過程で少なくとも2回独立に、条鰭類と肉鰭類のある時期に失われたことが示唆されている。そこでこの時期を明確にするため、まず条鰭類と肉鰭類のそれぞれでA系統からのF系統様の獲得が確認されている種より古くに分岐した動物種を対象とし、その野生個体の採集を行いゲノムDNAの抽出を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
ゼブラフィッシュの培養細胞から組換えIFN-γにより誘導された免疫プロテアソームを精製し、多種の合成ペプチド基質を用いてPSMB8の二型間の切断特異性を比較する。 脊椎動物におけるPSMB8遺伝子の二型性の進化過程を解明するため、採集した各種の野生個体を用いて、ゲノムPCRにより二型の有無の解析を行う。また、一部の種については採集可能な時期が限られており、本年度では採集が出来ていないのでその採集を引き続き行う。
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Causes of Carryover |
ゼブラフィッシュの免疫プロテアソームの各種サブユニットに対する抗血清の作製を行う予定だったが、抗原とする組換えタンパク質の作製が本年度中に間に合わなかったため繰越金が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越金の殆どは免疫プロテアソームの各種サブユニットに対する抗血清作製に使用する。
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