2016 Fiscal Year Research-status Report
真核細胞における好気エネルギー変換と細胞周期進行の関係
Project/Area Number |
15K18588
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
藤原 崇之 国立遺伝学研究所, 細胞遺伝研究系, 助教 (10595151)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 概日リズム / レドックス / 細胞周期 / 藻類 / 光合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
自然環境において、光合成藻類は昼間に光合成を行い成長し、夜は従属栄養的に恒常性を保っている。しかしながら、昼間は光合成による酸化ストレスにも暴露される。このような昼夜サイクルの中で、どのように光合成真核藻類が安定的に増殖しているのか不明な部分が多い。我々は光合成真核藻類が概日リズムによって光合成活性を最大化する時期(朝―昼)と細胞周期進行の時期(G1/S移行,夕方―夜間)とを時間的に隔てることで細胞のDNA複製と細胞分裂を過度な酸化ストレスから守っていること、および逆に光合成活性の変化から細胞内の酸化還元状態が変化し、それが概日リズムをリセットすることを見出した。我々はこのような双方向の制御が真核光合成藻類の持続的で安定な増殖に貢献していること示してきた。平成28年度は、単細胞紅藻C. merolaeを研究材料に用いて、酸化還元状態の変化が細胞時計に入力される機構を調べた。時計タンパク質に結合するタンパク質を同定し、その機能を調べた。またプロテインシフター法により、時計結合タンパク質は酸化還元状態に関連する活性型チオールが含まれることが分かった。時計結合タンパク質の欠損株は、時計タンパク質の欠損株と同様に概日リズムの変質が見られた。上記、時計タンパク質と時計結合タンパク質の相互作用および機能を調べるために、新たにクロラムフェニコール耐性遺伝子を形質転換系の選抜マーカーとする系を開発した(Fujiwara et al 2017 Frontiers in Plant Science)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞の酸化還元状態が細胞時計へ入力されるために必要とされるタンパク質の候補を発見することが出来た。この発見は好気エネルギー代謝(葉緑体・ミトコンドリア)から概日リズムを調節するためのレトログレードシグナルの存在を明らかにし、解析することにつながる。 また、C .merolaeにおいて、以前より用いられてきたウラシル要求性変異株を用いた形質転換法に加え、クロラムフェニコール耐性遺伝子を選抜マーカーとする形質転換系を開発した(Fujiwara et al 2017)。2個の遺伝子を改変することが可能となり、時計タンパク質と時計結合タンパク質の機能解析を行うことが容易になった。
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Strategy for Future Research Activity |
時計結合タンパク質欠損株における概日リズムの変質が、細胞内の酸化還元状態を変化に起因するのかを解析するために、細胞の過酸化水素また還元剤処理を行う。これによって概日リズムの形成がどのように阻害されているのか、時計タンパク質の活性型システイン残基の酸化還元とどのように関連しているかを調べていく。
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Causes of Carryover |
本計画を遂行するために必要なタンパク質の酸化還元状態を解析するための試薬が、当初計画していたよりも高額なものを使う必要が生じた。次年度もこの試薬を購入し使用するために、次年度に予算を残した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
タンパク質の酸化還元状態を解析する試薬を購入するための物品費として使用する。
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Research Products
(4 results)