2015 Fiscal Year Research-status Report
古環境情報を考慮した大陸間に隔離分布を示すカミキリムシの系統地理学的研究
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15K18592
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山迫 淳介 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員 (PD) (20748959)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | カミキリムシ / 系統地理 / 系統分類 / 長距離分散 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ユーラシア、北米、及び南米大陸に隔離分布を示す甲虫目カミキリムシ科フトカミキリ亜科の一群であるヤマナラシノモモブトカミキリ族を材料として、遺伝子情報に基づく系統地理学的解析を主体に、これまでに知られている地史、及び古環境データと対応させて大陸間の陸路による長距離分散プロセスを解明することを目的としている。初年度は、当初の研究計画に基づき、以下の1~3の通り研究を行った。 1.対象群の分類情報、及び分布情報の収集、整理.まず、国内外の博物館、及び個人コレクションに所蔵される標本データ、及び文献情報の調査を行い、各種の分類、生態、及び分布情報を蓄積した。 2.野外調査、及びサンプル収集.標本調査、及び文献情報から得られた分布情報に基づき、欧州、及び東アジアにてDNAサンプル収集を目的とした野外調査を行い、遺伝子解析用サンプルを採集し、得られた種、及び個体の生態情報を確認した。さらに、国内外の研究者、及び愛好家に協力を依頼し、各地のサンプルの収集を行った。 3.遺伝子解析、及び系統推定.これまでに集積されたサンプルのミトコンドリアDNA(COI領域)、及び核DNA(28S領域)をPCR法で増幅し、塩基配列を決定し、各属、種間の系統関係を解析した。その結果、少なくとも本族の内、ユーラシア大陸に分布する3属は、それぞれ系統的に離れている可能性が示唆され、今後のさらなる解析が必要であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
野外調査や研究協力者を通じて、東アジア産のサンプルは当初の予定通り集めることができた。しかし、欧州や新大陸の材料については、まだ十分に得られておらず、サンプル収集が当初の予定より遅れている。これらのDNAサンプル収集の遅れに伴い、研究の進捗がやや遅れている。また、予備検証として形態形質を用いて行った系統解析では単系統性を示したユーラシア大陸に分布する3属は、これまでの分子系統解析ではそれぞれ系統的に離れている可能性が示唆された。そのため、解析する遺伝子領域を当初予定していた領域から変更して適切な領域を見出し、さらなる検討を要する。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、自身の野外調査、及び研究協力者との連携により、特にサンプルの不足している新大陸を重点的に研究材料の収集に取り組む。分子系統解析は解析領域を追加し、得られたサンプルを逐次追加しながら進める。得られた塩基配列を基に、ユーラシア、新大陸の各集団間の分岐年代を推定し、得られた系統地理学的情報をこれまでに知られている地史、及び古環境データと対応させて大陸間の長距離分散を検討する。
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Causes of Carryover |
初年度に予定していた中南米での調査を調査許可取得の問題により遂行できなかったたため、その分を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度に中南米での調査を予定しており、その際の経費として使用する予定である。
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