2016 Fiscal Year Annual Research Report
Phylogeographic analysis of the tribe Acanthoderini (Insecta, Coleoptera, Cerambycidae) based on molecular data
Project/Area Number |
15K18592
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山迫 淳介 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員 (20748959)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 長距離分散 / 系統解析 / 生物地理 / カミキリムシ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ユーラシアと新大陸に隔離分布を示すカミキリムシ科甲虫のヤマナラシノモモブトカミキリ族を材料として、遺伝子情報に基づく系統地理学的解析を主体に、大陸間の陸路による長距離分散プロセスの解明に取り組んだ。 本族は約70属からなり、その大半が新大陸に分布する一方で、ヨーロッパおよびアジア北部と北米に共通する2属(Aegomorphus、Oplosia)と日本固有の1属(Callapoecus)が知られている。平成28年度は、前年度に引き続き各地の遺伝子解析用サンプルを収集し、収集した代表的な属についてミトコンドリアDNA(COI)と核DNA(18S、28S、Histone H3)の塩基配列を決定して、系統解析を行った。その結果、最節約法、最尤法およびベイズ法に基づく系統推定のいずれにおいてもOplosiaとCallapoecusの両属は、いずれも本族やその他の既知族と近縁関係を示さない特異なグループであることが明らかとなった。一方で、Aegomorphusや新大陸産属は、いくつかの小グループに分かれ、それぞれモモブトカミキリ族の仲間とクレードを形成したため、モモブトカミキリ族の一部が複数回独立に進化した多系統群で構成されることが示された。 これらの結果から、ヤマナラシノモモブトカミキリ族は多系統群であることが示唆され、分類学的再検討が必要であると考えられた。また、本族における大陸間隔離分布は、その進化史を反映したものとは言えず、想定していた分散仮説の多くは棄却された。一方で、Aegomorphusのみは、その祖先集団が新大陸からユーラシア大陸に進出した可能性が示唆された。しかし、本属と同一クレードを形成したモモブトカミキリ族は、汎世界的に分布する大群であるため、その系統位置および進化史を詳細に解明するためには、今後世界各地のサンプルを用いた解析が必要であると考えられた。
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