Outline of Annual Research Achievements |
今年度は, 白色腐朽菌による材分解の詳細を明らかにするステップとして, 腐朽における組織変化を詳細に捉えることで, 材分解の多様性を把握することを目的に実験をした。 木材腐朽性担子菌の多くは樹種嗜好性を有することに着目し,ブナあるいはスダジイに嗜好性のあるタマチョレイタケ科の菌種を用いて, ブナ及びスダジイ木材片による腐朽試験を実施した。腐朽試験開始から120日までの重量減少率や木材組織の変化を継時的に観察することで, 菌種の木材分解特性を調査した。腐朽試験を開始後, 120日目のブナ材の重量減少率を調査した結果, 材を著しく分解する菌株と腐朽が進まない菌株に二分し, 一方, スダジイ材では菌種や菌株に関わらず, いずれも顕著な分解は起こさず, 重量減少率は菌株で大差はなかった。 30日毎に腐朽材片の組織観察を行った結果, 全ての菌種・菌株は, 樹種に関わらず, まず木部繊維の二次壁を分解した。しかし, その後の木材組織の分解パターンは樹種によって異なった。腐朽に伴う分解パターンは, ブナでは重量減少率が高い菌株ほど早期に見られ, 一方, スダジイ材では、菌株の重量減少率の差に関わらず同時期に開始していた。また, 本研究に供試した菌株は, いずれもリグニン分解酵素活性が認められたものの, 各菌株の活性値と重量減少率には相関が無いことも示された。 本研究に供試した白色腐朽菌の木材腐朽に関する特性は, 菌種や菌株よりも樹種の性質に影響されることが示唆された。また, 木材の分解パターンは, 種以上のレベルで互いに類似し, また, 基質となる樹種に応じて変化することも明らかになった。
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