2016 Fiscal Year Research-status Report
竹食に特化したジェントルキツネザル:シアン化物解毒作用をもつ腸内細菌の特定
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15K18608
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
澤田 晶子 京都大学, 霊長類研究所, 研究員 (10646665)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ジェントルキツネザル / 竹食 / 腸内細菌 / 霊長類 / 青酸配糖体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、有毒な竹(Cathariostachys madagascariensis)を主食とするジェントルキツネザル3種 (ハイイロジェントルキツネザル、キンイロジェントルキツネザル、ヒロバナジェントルキツネザル) の腸内細菌叢を調べ、シアン化物解毒作用をもつ細菌種を特定することを目的とする。同所的に生息するこれら3種のジェントルキツネザルは共通して竹を主食とする一方、有毒な竹への依存度や採食部位への嗜好性が異なる。採食内容と腸内細菌の関連性を調べるため、マダガスカル東部に位置するラヌマファナ国立公園に生息するジェントルキツネザル3種から糞を採取し、日本国内に輸入した。次世代シーケンサーを用いて腸内細菌叢を網羅的に調べたところ、有毒な竹への依存度が最も高いヒロバナジェントルキツネザルの腸内細菌構成が他の2種とは大きく異なることが確認された。また、ヒロバナジェントルキツネザルからは、他の2種ではみられないクロストリジウム属(セルロース分解菌を含む)の細菌が検出された。調査時、3種のうちヒロバナジェントルキツネザルのみが固くて繊維含有量の高い竹稈を食べていたことから、繊維消化と関連する菌種が増加していたと推測される。また、青酸配糖体含有量はタケノコ、成熟葉、若葉、稈など部位によって異なるため、各部位での含有量を測定し、どの部位と腸内細菌叢の関連性を3種間で比較する。タキシフィリンなどの青酸配糖体は分解されやすいことから、カラーチャートを用いた比色定量など、設備の限られた調査地でも実施可能な簡易測定方法を検討中である。採食内容と腸内細菌叢の関連性について議論するため、有毒な竹を食べたことのない恩賜上野動物園の飼育個体から採取した糞の解析も進めている。これらの結果を踏まえ、菌種の機能性を調べることでシアン化物解毒作用をもたらす菌種の特定を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、ジェントルキツネザル3種の糞試料の採取および日本国内への輸入を完了させた。遺伝子解析も順調に進んでおり、データの一部をすでに学会で発表した。飼育個体についても現在解析中である。竹に含まれる青酸配糖体の測定するにあたり比色定量が可能であることは確認できており、日本国内での予備実験を経て現地で実施する運びになっている。以上の理由より「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在解析を進めている野生および飼育ジェントルキツネザルの腸内細菌データをまとめる。現地で竹の青酸配糖体含有量を測定し、採食部位の違いによって3種間で青酸配糖体摂取量に差が生じているか検証する。最も摂取量が高くなる時期に増える菌種に着目し、シアン化物解毒作用をもたらす細菌の特定を試みる。
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Causes of Carryover |
年度末に野外調査を実施するため翌年度分の前倒し申請をおこなったが、共同研究者のスケジュールの関係から渡航を次年度に持ち越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度実施予定の渡航および実験で次年度使用額として生じたものを使用していく予定である。
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Research Products
(6 results)